ネットでテストエンジニアについて調べると「テストエエンジニア 底辺」や「テストエンジニア やめとけ」など、ネガティブなワードが出てきて不安を感じる人もいるのではないでしょうか?

この記事では、テストエンジニアが底辺と言われる理由や、テストエンジニアの仕事内容、将来性を解説します。テストエンジニアの職に就いていて将来に不安を覚える人や、テストエンジニアに興味がある人はぜひご覧ください。

テストエンジニアが底辺と言われる理由

テストエンジニアが底辺と言われる理由は、給料の問題や業務で身につけられるスキルの少なさが関係しています。そのような言われ方をされる理由は以下のとおりです。

  • 給料が低いから
  • 技術が身につきにくいから
  • 開発サイドと比較されるから
  • キャリアパスに限界があるから

給料が低いから

テストエンジニアの平均年収は約450万円、年収300万円程度からスタートという企業が多いです。さらに所属する企業や自分の保有スキルによっては、平均年収に届かないということもあります。

厚生労働省の調査によるとシステムエンジニアの平均年収が660万円なので、比較すると平均年収は低いといえます。

参考:厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査

技術が身につきにくいから

テストエンジニアの仕事は、ある程度ルーティンな作業が多く、最新の技術に触れる機会が少ない仕事が多いです。単体テストや結合テストなど、手作業で行うテストが多ければ多いほど、新しい技術を学ぶ機会は限られてしまいます。

一方、開発エンジニアは、常に新しいフレームワークや言語を学び、実装することで技術力を向上させるられます。

開発サイドと比較されるから

テストエンジニアは、開発エンジニアが作ったものを検証する立場にあるため、どうしても開発エンジニアとの序列のようなものが発生してしまいます。バグを発見できなかったり、テストが遅延したりした場合には、責任を問われることも。

また、開発エンジニアが新しい機能を実装してシステムを進化させる一方で、テストエンジニアの業務の多くは自動化が進んでいることもあり「AIでもできる楽な仕事」と誤解されることも少なくありません。

努力しないとキャリアに限界があるから

テストエンジニアは業務の特性上、開発などの上流工程に携わりにくく、業務で身につけられる知識だけではスキルアップが難しいケースがあります。SESでテストエンジニアとして働いている場合は、この流れがよりはっきりと現れるかもしれません。

SESなどの現場でテストエンジニアとして働くと、プロジェクト単位での採用という状態になることが多く、テストが終了すると同時に業務も終わってしまいます。

テストケースの作成や、より質の高いテストやテスト自動化のプロジェクトを始める前に、テスト作業が終了してしまうため、キャリアアップが難しくなります。

テストエンジニアの仕事内容

テストエンジニアの仕事内容は以下のとおりです。

  • テスト計画の策定
  • テスト仕様書の作成
  • テスト実施
  • テスト結果の分析・報告

テスト計画の策定

テスト計画は、テスト活動全体の方向性を定める重要な工程です。テストエンジニアは、以下の項目を詳細に計画します。

テスト計画に必要な項目
  • テストの目的:システムのどの部分を検証するのか、どのような品質特性を評価するのかを明確にする
  • テスト範囲:テスト対象となる機能やモジュールを特定し、テストから除外する範囲を定義する
  • テスト項目:各テスト項目を具体的に記述し、テストケースの作成に繋げる
  • テスト環境:テスト実行に必要なハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク環境などを定義する
  • テスト実施スケジュール:各テストフェーズの開始日と終了日を決定し、リソース配分を計画する
  • テスト担当者:各テスト項目の担当者を割り当て、責任範囲を明確にする
  • テスト成功基準:テストが成功と判断できる基準を定める
  • リスク評価:テスト中に発生する可能性のあるリスクとその対策を検討する

テスト仕様書の作成

テスト仕様書とは、テスト計画に基づいてより詳細なテスト内容を記述したものです。すべてのテストは、このテスト仕様書をもとに実施します。そのため、漏れなくぬかりないテスト仕様書の作成が求められるのです。

テスト仕様書に必要な項目
  • テストケース:各テスト項目に対して、入力データ、期待される出力、テスト手順などを具体的に記述する
  • テストデータ:テストケースで使用する具体的なデータを作成する
  • テスト環境設定:テスト実行に必要な環境設定手順を記述する

テスト実施

テスト仕様書に基づいて、実際にシステムをテストします。

テストの内容
  • テスト実行:テストケースに従って、システムを操作し、結果を確認する
  • バグ報告:バグを発見した場合、バグトラッキングシステムに登録し、開発者に報告する
  • テスト結果記録:テスト報告書の作成に利用する、テスト結果を記録する

テスト結果の分析・報告

テスト結果を分析し、テストの有効性やシステムの品質を評価します。わかりやすくレポートにまとめて開発部門に報告します。

テスト結果の活用
  • テスト結果評価:テスト結果を定量的に評価し、バグの発生状況やテストカバレッジなどを分析する
  • テスト報告書作成:テスト結果をまとめ、テストの成功度、発見されたバグ、残存するリスクなどを報告する
  • 改善提案:テストプロセスやシステムの改善点に関する提案をする

テストエンジニアの重要性

テストエンジニアはシステムやWeb開発において重要な役割を担っています。

  • システムの品質を担保する
  • ユーザーの安全を守る
  • 開発の効率化につながる

システムの品質を担保する

テストエンジニアは、システムの品質を担保する上で不可欠な存在です。

テストエンジニアは開発されたソフトウェアやシステムが、設計通りの機能を果たし、意図したとおりに動作することを検証します。

開発にバグはつきものです。バグの早期発見や性能検証をすることで、ユーザーが不便なく使えるソフトウェアやシステムになるのです。

ユーザーの安全を守る

企業のシステムでしばしば話題になるセキュリティ問題。情報漏洩は企業としても確実に防ぎたい要素です。もしも納品したシステムのセキュリティに問題があった場合、ユーザーにとっても企業にとっても大きなデメリットとなります。

テストエンジニアの仕事によって品質を担保することで、関節的にユーザーの安全を守れるようになるのです。

開発の効率化につながる

テストエンジニアは、開発プロセス全体を効率化するための重要な役割を担っています。テストを自動化し、開発の早い段階からバグを発見することで、開発サイクルを短縮し、開発コストを削減します。

また、テスト結果に基づいて開発プロセスを改善することで、より高品質なシステムを短期間で開発することができます。

最初のうちはテストをすることで精一杯かもしれませんが、効率化を意識して日々の仕事に取り組むことが重要です。

テストエンジニアの将来性

テストエンジニアの仕事自体がなくなる可能性は低いですが、求められる能力は従来のものと変わってくる可能性があります。

ここでは、テストエンジニアの将来性について解説します。

AIにより仕事が減る可能性がある

AI技術の進化はすさまじく、さまざまな分野で自動化が進んでいます。テストエンジニアの仕事においても、テスト自動化によって手動テストの必要性が低くなることから、将来性が怪しいと考える人もいます。

繰り返し行われる単純なテスト作業は、AIに置き換わる可能性が高く、一部の企業では、テスト自動化ツールにAIが導入され、テスト効率の向上に貢献しています。

テストエンジニアの仕事内容は、単純なテストではなく、バグの検出率を挙げるための探索テストや、開発サイドへのフィードバック業務に重きを置かれるようになることが予想されます。

キャリアパスを考えておいたほうがよい

これからのテストエンジニアは、能動的に自己のキャリアを考え、構築するために行動することが求められます。

単にAIに仕事を取って代わられるという理由だけではなく、IT業界自体の急速な変化の中で生き残っていくには、自分の強みを明確にし、それに沿ってスキルを構築しないと、いずれ頭打ちになるリスクがあるからです。

漠然とキャリアを考えるのではなく、自分は何が得意で何が苦手か、どのような作業が好きなのかを洗い出し、強みを最大限に活用できるようなキャリアパスの検討が重要です。

キャリアアップに役立つスキル

テストエンジニアのキャリアアップに必要なスキルは以下のとおりです。

  • 管理スキル
  • 分析スキル
  • セキュリティスキル

管理スキル

大規模なプロジェクトでは、テストエンジニアでチームを組んでプロジェクトに携わることになります。このような場合は、経験年数の長いメンバーやリーダーポジションのエンジニアがチームの統括をします。

ミーティングでの認識合わせやトラブル対応、業務調整など、テストにかかわる作業以外の部分で活躍できる人材は重宝されます。

分析スキル

テストエンジニアで身につくスキルのひとつに、分析能力が挙げられます。

バグを発見したらテスト結果から原因を分析し、バグ同士の関連性やバグが発生した仮説を分析することで、開発サイドの作業が楽になるだけではなく、自分自身の分析スキル向上につながります。

セキュリティスキル

近年のセキュリティ対策のニーズアップに伴い、より高度なシステムでは、セキュリティの知見を持ったエンジニアがテストをおこなう傾向があります。

セキュリティの知識を身につけることで、高度な案件にも携われるチャンスが増えるため、キャリアアップにつながるでしょう。

テストエンジニアのキャリアパス

テストエンジニアにはどのようなキャリアパスがあるか紹介します。

  • スペシャリスト
  • テストリーダー・テストマネージャー
  • テストアナリスト
  • QAエンジニア
  • プログラマー

スペシャリスト

テストエンジニアは、最初は決められたテストを実行する部分から業務を始めます。経験を積むにつれて、テスト結果の分析や、テストの設計など、あらゆるテスト業務に対応できるようになり、スペシャリストと呼ばれるようになります。

ただ漠然と日々のテストをこなすだけでは、年数ばかりが過ぎてしまい、スペシャリストになることは難しいでしょう。

システムの理解など、職種を超えた知識を身につけることで、スペシャリストへの道が開けます。

テストリーダー・テストマネージャー

大規模なプロジェクトで活躍するのが、テストリーダーやテストマネージャーです。チーム全体を管理し、計画どおりに業務を遂行できるように管理します。

テストエンジニアの王道キャリアパスです。

テストアナリスト

テストアナリストは、システムの仕様や設計を分析し、テストケースを作成したり、テスト結果を分析したりします。分析部分に特化したテストエンジニアといえるでしょう。

ビジネス要件を理解し、テスト計画に落とし込む能力が求められます。

QAエンジニア

QAエンジニアとは、Quality Assurance(品質保証)の略で、ソフトウェアやシステムの品質を担保するための専門家です。

製品のテストに携わる点では、テストエンジニアと同じですが、QAエンジニアはテストだけでなく、品質補償プロセス全体を管理し、製品の品質向上に寄与することが求められます。

プログラマー

テストエンジニアの業務においてソースコードを見たり触れたりした経験を活かして、プログラマーを目指す人も多くいます。

テストエンジニアで培った、自動化の観点や、よりよいテストコードの書き方についての知見はプログラマーになってから役立ちます。

ただ、テストエンジニアの仕事ではコーディングのスキルは身につかないため、独学でコーディングの勉強をする必要があります。

テストエンジニアのよくある質問

最後に、テストエンジニアについてよくある質問をまとめました。

  • テスターとテストエンジニアの違いは?
  • テストエンジニアに向いている人は?

テスターとテストエンジニアの違いは?

テスターは、テストエンジニアの業務のうち「テストの実施」のみをおこないます。テストエンジニアは、テストの設計から実施、分析、レポート化まで幅広く対応します。

テスターの上位互換がテストエンジニアです。

テストエンジニアに向いている人は?

テストエンジニアに向いている人には以下のような特徴があります。

テストエンジニアに向いている人の特徴
  • 同じ作業をコツコツとできる
  • 観察力があり、違和感に気づける
  • 作業の優先順位をつけられる
  • 論理的思考で分析ができる

市場価値のあるエンジニアを目指そう

テストエンジニアは底辺ではないですが、スキルアップやキャリアパスの面では自分で考えて行動する必要があります。乱暴な言い方をすると、目の前の仕事をただこなすだけのテストエンジニアは、将来性がなく「底辺」になるリスクがあるかもしれません。

AI技術が発展しても、テストエンジニアの仕事が完全になくなる可能性は低いと考えられます。エンジニアとしてのキャリアパスを明確にし、必要な努力をし、将来的に市場価値の高いエンジニアを目指しましょう。