SREエンジニアは、WebサイトやIT関連サービスが円滑に運用されるために不可欠な存在として、近年注目が集まっている職種です。
本記事ではSREの概要や、混同されがちなインフラエンジニアとの違い、必要となるスキルなどについて詳しく解説します。
キャリアパスも取り上げるので、将来的にSREエンジニアを目指したい方も、ぜひ参考にしてください。
SREエンジニアとは
SREは2004年にGoogleより提唱されたIT運用のアプローチ方法で、「Site Reliability Engineering(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング)」の頭文字を取ったものです。
従来、Webアプリケーションは、開発領域と運用領域が分断されているケースが一般的でしたが、それでは多くのサービスが開発される分、トラブルも多く発生し、システムの品質が低下してしまう恐れがあります。
その状況を総合的に改善するため、開発側・運用側の隔たりを解消し、Webサービスの信頼性を向上させるべく活動するのが、SREエンジニアの役割といえます。
SREとインフラエンジニアとの違い
SREエンジニアとインフラエンジニアは混同されがちですが、両者は業務範囲や、それに伴う必要スキルに差があります。ここではSREとインフラエンジニアの違いについて見ていきましょう。
業務範囲
インフラエンジニアは、あくまでもITインフラストラクチャに関する業務を担う職種です。IT基盤の構築や運用管理、監視、問題の解消などに対応しますが、直接的にアプリケーションの品質改善などを実施するわけではありません。
それに対しSREはシステムやアプリケーションの価値を高めることが目的です。その業務範囲はアプリケーションの利便性や信頼性の向上にまで及びます。
求められるスキル
インフラエンジニアには、ITインフラの構築や運用に必要な知識・スキルが求められます。
それに対し、SREエンジニアは、アプリケーションの開発に関する技術に加え、サービスの信頼性を高められるような、幅広い知識が必要となります。
GoogleはSREエンジニアチームを組織する場合、半数をアプリケーションエンジニアで構成するべきとしています。それだけSREエンジニアにはアプリケーションの開発・運用への実行力が求められているということです。
仕事の進め方
インフラエンジニアの仕事は、要件定義や設計・構築を行う上流工程と、運用・保守を担う下流工程に分けられます。ただし業務の進め方については、明確な形式があるわけではなく、企業により担当範囲が異なるケースも多いです。
一方SREの仕事の進め方には明確な方法論があり、Googleも「Site Reliability Engineering」という書籍を公開しています。この方法論にもとづいた形で、システムやアプリの開発、サポート、自動化、モニタリングなどを行います。
SREとDevOpsの違い
「DevOps」もSREと混同されやすい用語です。DevOpsはDevelopment(開発) とOperations(運用)を組み合わせた言葉で、開発側と運用側が協働してサービスを開発していく手法を指します。
サービスの開発・運用プロセスを一体化させ、スムーズかつ迅速に進めることが、DevOpsの目的といえるでしょう。
SREも、開発側と運用側の隔たりを解消するという点ではDevOpsと共通していますが、信頼性の向上を目的としている点に意味合いの違いが見られます。
SREはサービスの早期のリリースばかりを目指すのではなく、サービスの利便性向上を図り、価値を高めることも目標としています。
SREエンジニアの役割と業務内容
SREの目的はWebサービスの信頼性の向上で、その指標を数値化・計測しながら改善を図ります。とはいえ、SREエンジニアの具体的な業務について把握しきれていない方も多いのではないでしょうか。
ここではSREエンジニアの役割と業務内容を解説します。
障害対策や課題解決をする
Webサービスの利便性を維持向上させることがSREエンジニアの役割です。そのためにシステムやアプリケーションに生じうる障害対策や課題の解決も、SREエンジニアの担当業務です。
修正パッチの作成やサーキットブレーカーの導入など、エラーが生じた際の対処法を用意し、サービスのスムーズな開発・運用環境を整えます。
システム・クラウドサービスの運用に取り組む
Webサービスの開発環境を整えるために、システムやクラウドサービスを運用することもSREエンジニアの大切な役割といえます。システム・クラウドサービスが安定的に稼動していることで、開発チームは開発に専念できます。
このほかサーバー環境の最適化など、システムの可用性向上を図ることもSREエンジニアの重要な業務です。
システムを自動化する
システムの自動化も、SREが担う重要な業務内容です。ログの自動解析ツールやスプレッドシートのデータ自動更新のように、システムを自動化させることで、開発者の負担が軽減し、作業効率がアップします。
システムの自動化を図り、開発者がスムーズに開発を進められる仕組みを整えることが、SREエンジニアの役割といえるでしょう。
SREエンジニアが備えたい知識やスキル
Webサービスの信頼性向上を図るSREエンジニアには幅広い知識とスキルが求められます。ここではSREエンジニアが身に付けたいスキルの内容について解説します。
クラウドサービスの開発や構築・運用スキル
近年は運用のしやすさやコスト削減を求め、クラウドサービスを採用する企業も増えています。クラウドサービスの安定化は、システムやアプリケーション開発を円滑に進めるためにも欠かせません。
そのためSREエンジニアは、AWS・Microsoft Azure・Google Cloud(GCP)といったクラウドサービスの基本的な機能を理解し、クラウドサーバーを構築・運用していくスキルを身に付けておくと良いでしょう。
アプリケーションの開発や保守、運用スキル
サービスの信頼性を上げるために、SREエンジニアはアプリケーションの開発や保守、運用に関する知識も持ちあわせておく必要があります。
実際にLinux OSやApache HTTP Server、MySQL、PHP、Pythonなどを用いて環境構築できるスキルが求められることが多く、開発と運用に関する実務経験は欠かせません。ユーザーの使用感に直結する開発・運用スキルも、SREエンジニアには求められるのです。
セキュリティ関連の知識
セキュリティ対策はWebサービスの信頼性を維持するうえで欠かすことのできない大切な要素です。そのためSREエンジニアは、セキュリティリスクに対する適切な理解や、セキュリティレベルが高いシステムの構築スキルなど、セキュリティに関する一定の知識が必要となります。
ユーザーの利便性を向上するうえで、安全性の確保は不可欠なものであり、企業にとってもセキュリティ対策は重要課題のひとつといえます。
ネットワークに関する知識
SREエンジニアは、アプリケーションの開発やシステム運用がスムーズに行われる、「環境整備」の役割を担う職種です。そのため、ネットワークなどのITインフラに関する知識もしっかりと備えておく必要があります。
ネットワークプロトコルなどの基本概念を理解するほか、ミドルウェアのパフォーマンスを向上させたり、不具合を解消したりするなど、ネットワークに関する知識を備え、安定的な稼働を支えることもSREの重要な役割です。
コミュニケーションスキル
エンジニアは個別で作業を行うイメージが強いかもしれませんが、実際にはチーム内のメンバーやクライアントなど、各担当者とコミュニケーションをとりながらプロジェクトを進めていくことが多い職種です。
SREエンジニアは開発側と運用側の隔たりを解消する役割を担うため、開発者などと連携しながら業務を進めるコミュニケーションスキルが求められるでしょう。
SREの具体的なキャリアパスと将来性とは
SREエンジニアとして活躍するには、ITに関する幅広い知識ばかりでなく、実務的なスキルも必要となります。ここではSREエンジニアになるためのキャリアパスや、この職種の将来性について解説します。
SREになるには?
SREになるためのキャリアパスはいくつかありますが、未経験からSREエンジニアとして就職するのは難しいのが実状です。
ネットワークやデータベースなど、インフラに関する知識も必要となるため、インフラエンジニアやシステムエンジニアとして実務経験を積み、そこからIT専門の転職エージェントを利用して、SREエンジニアへキャリアアップするという方も多いです。
それ以外の場合でも、一定のITスキルは要求されるため、プログラミングスクールでSREに関するスキルを学んだり、関連資格を取得したりするなど、実務的な技術を身に付けたうえで、SREスキルを磨いていく流れが一般的です。
SREの将来性
比較的新しい職種であるSREエンジニアの将来性は、明るいと言ってよいでしょう。
昨今、企業の間では、柔軟性の高いクラウドサービスの導入が進んでおり、この流れは今後も加速することが予想されます。それと同時にクラウド環境でのサービスの信頼性確保や、問題点の解消は、今後の企業の重要な課題となるはずです。
その点で、クラウドサービスの運用に長け、信頼性の向上にまで責任を持つSREエンジニアのニーズは、今後もますます高まっていくでしょう。SREのフリーランス案件なども増加が見込めます。
SREエンジニアにおすすめの資格
ここではSREエンジニアとして活躍するのにおすすめの、IT関連資格を紹介します。下記の資格を取得することで身に付く技術・知識は、SREの現場でも有効活用することができるでしょう。
EXIN DevOps Professiona
EXIN DevOps Professionaは、オランダ経済省により設立された独立試験機関EXIN社が主催する資格で、DevOpsの専門性を認定するものです。
DevOpsは開発側と運用側が協働する方法論であり、両者の隔たりを解消したうえでシステムの利便性向上を図るSREと共通する部分もあります。その点で、EXIN DevOps Professionaの資格は、SREエンジニアも有効活用できるスキルといえるでしょう。
Cisco Certified DevNet Associate
Cisco Certified DevNet Associateは、アメリカに拠点を置く世界最大手のコンピュータネットワーク機器開発会社、シスコシステムズが主催する資格です。シスコのプラットフォームにおけるアプリケーション開発スキルを証明するもので、DevOpsを行う技術者を対象としています。
ネットワークの知識に加え、ソフトウェア開発の技術も問われるため、横断的なスキルを必要とするSREエンジニアにも有効でしょう。
AWS認定の認定資格
AWS認定とは、世界でもっとも利用されているクラウドサービスプラットフォーム、AWS(アマゾンウェブサービス)が主催する認定試験で、クラウドに関する専門知識を認証するものです。
AWSの専門的知識を身に付ければ、他のクラウドサービスを用いた開発・運用にも応用が可能なため、SREエンジニアの募集要件にAWS認定資格の取得が挙げられるケースも少なくありません。
なお、AWS認定資格には「FOUNDATIONAL」「ASSOCIATE」「PROFESSIONAL」「SPECIALTY」の4つのレベルが設定されています。
まとめ
SREは従来のシステム開発・運用状況の課題を改善し、サービスの信頼性向上を実現する手法です。
特に企業のクラウド化が進む現在は、業界を問わず需要が高まりつつあり、SREエンジニアの将来性は明るいといえるでしょう。
ただしSREエンジニアに求められる知見や技術はハイレベルで、実務的な運用能力も重要です。SREエンジニアを目指す方は、即戦力として活躍できるようなスキルを身に付ける必要があるでしょう。