中小IT企業は、「大企業と比べてブラックだからやめとけ」と言われることが多いです。
しかし、それは本当なのでしょうか?確かに、中小IT企業の中にはブラック企業もありますが、実際は魅力的な企業も数多くあります。
今回は、「中小IT企業はやめとけ」と言われる理由と、ホワイトな中小IT企業の後悔しない見極め方を紹介します。
中小IT企業はやめとけと言われる理由
中小IT企業が「やめとけ」と言われる背景には、ブラック企業の存在や大手との待遇格差があります。
しかし、これは一部の企業の話であり、中小IT企業全体に当てはまるわけではありません。ここでは、「やめとけ」と言われる理由を詳しく見ていきましょう。
ブラック企業の割合が高い
中小IT企業は、長時間労働、低賃金、パワハラなどの問題を抱える企業が多く、大手に比べてブラック企業の割合が高いと言われています。
また、研修制度の不足、大手との年収格差、上流工程の仕事が少ないことも、「中小IT企業はやめとけ」と言われる理由です。他にも、SESや客先常駐の下請け企業が多く、ワークライフバランスが実現しにくい傾向にあります。
大手との年収格差が大きい
中小IT企業は、大手企業と比べて給料が低いことが多く、経験年数が増えるほど、その差が大きくなります。
新卒時は似たような給与でも、5年、10年と経験を積むにつれ、大手と中小の年収差が広がっていきます。
ただし、この話もすべての中小IT企業に当てはまるわけではありません。急成長中のベンチャーや、特定の技術や業界で強みを持つ中小企業では、大手並み、あるいはそれ以上の給与となることもあります。
上流工程の仕事が少ない
IT業界では、要件定義や設計などの上流工程の仕事が人気です。やりがいも大きく、システムの根幹に関わりクライアントとも直接やり取りできます。しかし、中小IT企業では上流工程の仕事に携われる機会は限られています。
なぜなら、大手企業の多くはプロジェクトを受注し、要件定義や設計を自社で行うからです。中小企業は下請けとして、コーディングなどの下流工程を担当することが多いのです。
キャリアアップのために上流工程の経験が重要だと考える人は、この点で中小企業を避けることになるでしょう。
SES・客先常駐の下請け企業が多い
中小IT企業の多くは、SESや客先常駐の下請け企業です。つまり、自社内で開発するのではなく、他社の現場に派遣されることが多くなってしまいます。
SESや下請けが好まれない理由の一つに、自社製品を持たないため他社のルールに従わざるを得ず、不満が生じてしまうことがあります。
また、案件が終わると別の現場に移ることも多く、長期的な視点で仕事に取り組みにくいと感じる人もいるでしょう。さらに、技術的にも単純な作業を任されがちで、スキルアップの機会が少ないと考える人もいます。
研修やスキルアップの制度が整っていない
大手IT企業では、新人研修から、技術別、役職別の研修まで、体系的なプログラムが用意されていることが多いです。
一方、中小IT企業では、予算や人員が限られているため、体系的な教育システムを構築するのが難しい状況にあります。しかし、これは悪いことばかりではありません。
大手企業の研修は実践から離れて体系的に学ぶことになります。一方、中小企業は、現場でしか学べないことを直接吸収でき、これは中小企業ならではの利点とも言えるでしょう。
大手IT企業への転職が難しい
中小IT企業で働いていると、大手IT企業への転職が難しいと言われることがあります。大手企業は、同じ大手出身の人材を好む傾向があるためです。
大手企業社員は、大手の文化やプロセスを理解している人材を高く評価します。また、有名大手の名前が履歴書にあるだけで、評価が上がることもあります。
しかし、今のIT業界は、スキルと実績を重視する傾向が強まっているので一概には言えません。大切なのは、自分のスキルを証明できることです。
ワークライフバランスが実現しにくい
大手企業は人員に余裕があり、ローテーションを組んで休暇を取りやすくしたり、残業を分散させたりできます。
一方、中小企業では一人が複数の役割を担当することが多く、その人がいないと仕事が回らないという状況です。
そのため、残業が多く、休暇も取りにくいことがあり、「休んだら仕事が溜まる」「休むと迷惑がかかる」という雰囲気を感じることがあります。
福利厚生が不十分な中小IT企業が多い
大手IT企業は、福利厚生が充実している傾向にあります。社員寮や保養所、社内スポーツジム、育児・介護支援、手厚い健康保険、豪華な社員旅行など、リストを見ているだけでもうらやましくなりますよね。
一方、中小IT企業では、福利厚生が不十分なことが多いです。資金や規模の制約から、法定以上の福利厚生を提供するのが難しいこともあります。
ただし、中小企業でも、ユニークな福利厚生や就業規則を持つ会社が増えており、一概には言えないことも念頭に置いておきましょう。
離職率が高く長続きしない
中小IT企業は、ブラック企業の割合も多く、労働環境の悪さや将来への不安から、長く働く人が少ない現状があります。
長時間労働、低賃金、パワハラなどのブラック企業的な要素に加え、キャリアパスの不透明さ、「この先どう成長できるのか見えない」等も、離職率が高くなる理由に挙がります。
また、技術的な停滞感を感じたり、同じ仕事の繰り返しで新しいことが学べないといった不満も多いです。さらに、中小企業、特にベンチャーは、いつ経営が傾くか分からないため離職するという場合もあります。
「やめとけ」と言われる中小IT企業の特徴
中小IT企業の中には、良い会社もたくさんあります。しかし、一部の企業は労働環境に問題を抱えています。ここでは、そういった「やめとけ」と言われる会社の特徴を見ていきましょう。
案件が選べない
SESや下請け企業では、クライアントの要望が優先され、エンジニアの希望は後回しになりがちです。
どのような技術を学びたいか、どのような業界に興味があるかに関係なく、来た案件をこなすだけ。これでは、エンジニアとしてのやりがいも成長も感じられません。
しかし、優良な中小IT企業では、エンジニアの希望を尊重し、スキルや興味に合った案件をアサインします。面談で「どのような技術に興味がある?」「どのような業界で働きたい?」とヒアリングし、それに合う案件を探してくれます。
一人で現場常駐している
ブラックな中小IT企業では、エンジニアが一人で客先に常駐することが多いです。特にSESや下請け企業で見られるこの働き方は、一見自由そうに見えますが、実は大きな問題があります。
まず、技術的な孤立です。先輩エンジニアに相談したり、同僚とコードレビューをしたりする機会がほとんどありません。
その結果、独りよがりな設計やバグの増加につながりかねません。人間関係の面でも課題があります。同僚との交流がないため、チームワークのスキルが身につきにくく、将来のキャリアにも悪い影響を及ぼす可能性があるのです。
また、クライアント先でのトラブルも一人で抱え込むことになります。
簡単に内定が出る
面接も形式的で、短時間で「合格」となることがよくあります。しかし、これは実は危険信号かもしれません。
人材を大切にする会社であれば、しっかりと選考し、適切な人材を見極めるために時間をかけます。簡単に内定が出る採用プロセスは、その会社が人材を使い捨てにする可能性が高いことを示しています。
採用プロセスが厳しくない企業では、入社後に過酷な労働環境が待っていることが多く、サポート体制も不十分です。
パワハラ・セクハラが横行している
残念ながら、一部の中小IT企業では、パワハラやセクハラが問題になっています。
上司の言動がひどかったり、セクハラ発言が日常茶飯事に飛び交ったりすることもあります。このような環境では、誰だって「やめとけ」と言いたくなりますよね。社員の精神的・肉体的な健康が損なわれ、働く意欲も失われてしまいます。
一方、優良な中小IT企業では、ハラスメント対策がしっかりと整備されています。定期的な研修や教育が実施されており、社内の規則やガイドラインも明確に定められ、安心して働ける環境です。
シニア社員が全く活躍していない
中小IT企業の中には、シニア社員が活躍できていない企業もあります。そのような企業は、シニア社員の豊富な経験が十分に生かされていないことにより、会社の成長や若手の育成が停滞しているかもしれません。
シニア社員の知識や技術が共有されないことで、若手社員は成長の機会を失い、企業全体の競争力も低下してしまうのです。
その一方で、優良な中小IT企業では、シニア社員が後進の指導や重要案件の担当など、大事な役割を果たしています。
シニア社員の経験と知識は貴重な資源として大切にされ、若手社員の育成に活用されています。
あえて中小IT企業を選択する理由とメリット
「中小IT企業はやめとけ」という声を聞くと、大手企業ばかりが魅力的に見えてしまいます。しかし、実は中小企業には大手にはないメリットもたくさんあるのです。
ここでは、そんな中小IT企業のいいところを見ていきましょう。
多様な開発案件に携われる
大手企業では一つの分野に特化することが多いですが、中小企業では幅広い経験ができます。中小企業での多様な経験は、キャリアの幅を広げる大きなチャンスです。
多様なプロジェクトに関わることで、さまざまなスキルセットを身につけられ、異なる業界の知識や技術に精通できます。これにより、エンジニアとしての市場価値も向上し、キャリアの選択肢を増やせます。
また、幅広い経験を通じて、自分の得意分野や興味のある分野を見つけることもできるでしょう。
未経験者でも速く成長し、実力をつけられる
大手企業では、研修期間が長く現場に出るまでに時間がかかることがありますが、中小企業ではすぐに仕事を任されることが多いです。
即戦力主義により実力を急成長させる絶好のチャンスになります。早期に実務経験を積み、実践的なスキルを迅速に習得できます。
また、現場での経験を通じて問題解決能力やコミュニケーション能力を磨くことも可能です。
中小企業で働くことで、自らの手でプロジェクトを進める責任感が生まれ、その経験が大きな成長を促します。
学歴・年齢・性別に関係なく評価される
中小IT企業の多くは、学歴や年齢、性別に関係なく、仕事の質で評価される実力本位です。一方、大手企業では学歴や年次が、昇進や評価に影響を与えることがあります。
自分の努力や成果が正当に評価されることで、モチベーションが高まり、自身の成長が実感できます。実力本位の中小IT企業では、自己成長の意欲が高まり、個々の能力を最大限に発揮できるでしょう。
経営者との距離が近い
大手企業では、トップとの距離が遠く、自分の声が直接届いた実感がないことも少なくありません。
しかし、中小企業では自分のアイデアや意見が会社の方針に影響を与えることもあります。トップマネジメントとの距離が近いことで、迅速な意思決定や柔軟な対応が可能となるのです。
社員一人ひとりの意見が尊重・採用されることで、働くモチベーションも高まり、仕事に対する責任感や達成感が増します。
優良な中小IT企業を見極める方法は?
中小IT企業に転職する上での問題は、会社の見極め方です。ブラック企業を避け、ホワイトな企業を見つけるには、いくつかのポイントがあります。
例えば、エンジニアの希望を反映した案件配置や有給休暇の消化率、女性エンジニアの活躍度などです。
同業他社と差別化できる強みがある
優良な中小IT企業は、何か独自の強みを持っています。独自の強みとは、特定の業界に強かったり、ユニークな技術を持っていたりするなど、各会社ならではの魅力のことです。
また、特定の業界に深い知見を持ち、特定の分野での専門性を発揮している企業や、独自の技術を開発し、他社にはないサービスを提供している企業などもあります。
こうした企業では、社員一人ひとりがその強みを活かし、やりがいを感じながら働けます。
面接時には、その企業がどのような強みを持っているのかをしっかりと確認し、自分のキャリアにどのように役立つかを考えることが重要です。
最新技術を取り扱っている
良い中小IT企業は、最新技術の取り扱いにも積極的です。AIやブロックチェーン、IoTなど、新しい分野に積極的にチャレンジしています。
最新技術に取り組む中小企業では、最先端のスキルを身につけることが可能です。こうした企業では、社員が新しい技術を学び、実践できる機会も多く、継続的なスキルアップが期待できます。
面接や企業研究の際は、企業のブログやSNSをチェックし、どのような技術を使っているかを調べてみましょう。
特にプロジェクトや製品にどのような最新技術が採用されているか、技術的なチャレンジをどう捉えているかを確認することが重要です。
有給休暇消化率が高い
ワークライフバランスを大切にしていることを確認できる指標の一つが、有給休暇の消化率です。
有給休暇の消化率が高い会社なら、社員の生活を大切にしている会社である証拠です。社員がしっかり休息を取ることで、リフレッシュし、生産性も向上します。
面接の際は、有給休暇の消化率を具体的に質問してみるのも良いでしょう。
また可能であれば、その他の福利厚生や柔軟な勤務体制についても確認してみるのも手です。企業のワークライフバランスへの取り組みが更に明確になります。
女性SEの割合が高い
女性SEが活躍する会社は、柔軟で働きやすい環境が整っていることが多いです。多様性が尊重される職場では、さまざまな視点やアイデアが取り入れられ、イノベーションが生まれやすくなります。
企業のウェブサイトや求人情報をチェックして、女性エンジニアの姿を探してみましょう。
また、女性社員のインタビューやブログ記事が掲載されている場合、記事の内容を読むことで会社の雰囲気や価値観をより詳細に確認できます。
避けるべきは中小企業ではなくブラック企業
中小IT企業にはたくさんのメリットがあります。しかし同時に、「やめとけ」と言われる理由もあります。
大切なのは、中小企業全体を避けるのではなく、ブラック企業を見極めることです。
優良企業やブラック企業の特徴を知る
優良企業は、社員のワークライフバランスを重視し、成長の機会を提供します。
一方、ブラック企業は長時間労働や低賃金、パワハラなど、労働環境の大きな問題を抱えています。
「中小IT企業はやめとけ」と言われる理由の多くは、実はブラック企業の特徴なのです。企業のレビューサイトや口コミを見て、実際の社員の声や口コミを確認してみましょう。
IT業界に強い転職エージェントを活用する
転職エージェントの担当者の多くは、ホームページに載っている表面的な企業情報だけではなく、企業の内部事情も把握しています。そのため、ブラック企業を避け、自分に合った優良な中小IT企業を紹介してくれるはずです。
ただ、大手志向のエージェントもいるため、中小企業の良さを理解している自分の就活方針に合ったエージェントを選ぶことが重要です。
まとめ
「中小IT企業はやめとけ」という言葉は一面的です。確かに、ブラック企業は避ける必要がありますが、優良でホワイトと言われる中小IT企業はたくさんあります。
多様な案件、速く成長できる環境、実力主義などは、中小企業ならではのメリットです。
大切なのは、ホワイト企業の特徴を知って見極められるようになり、IT業界に詳しいエージェントを活用すること。正しくエージェントを活用し、後悔しない就職先を見つけましょう。