IT人材の不足に伴い、文系出身者でもIT業界に就職する人が増えています。しかし、学生時代から専門的に勉強をしてきた人と比較すると、困難があるかもしれません。
この記事では、文系出身者がSIerで働くことについて解説しています。就活中の文系学生の皆様、もしくは文系出身だけど転職先としてSIerを検討している方はぜひご覧ください。
「文系はSIerやめとけ」の真相
なぜ「文系はSIerやめとけ」と言われるのでしょうか。その真相を解説します。
SIerとは何か
SIer(システムインテグレーター)とは、クライアントのニーズに合わせてITシステムを企画、設計、開発、導入、運用までを一貫して行う企業のことです。自社内で開発した製品を売るというよりは、クライアントのニーズに合わせてシステム開発をするイメージです。
簡単に言うと、クライアントの課題をITの力で解決するパートナーといえるでしょう。
文系がSIerに向いていないと言われる理由
情報系出身の人と比べると、どうしても基礎知識でハードルが高くなります。また、ITやプログラミングの基礎では数学的な知識を求められることが多く、理系出身者と比べて知識が不足してしまいます。
さらに、文系出身者よりも理系出身者のほうが、IT技術への興味・関心が強い場合が多く、世間の「IT=理系」のイメージもあって、文系出身者にSIerは向いていないと言われるのです。
文系がSIerで活かせる要素
文系出身といってもスキルや性格は人それぞれで、一概にくくることができません。それでも、傾向としていえることを解説します。
文系出身者がSIerで活かせる要素として、コミュニケーション能力が挙げられます。理系では「察する」というよりも、すべてを明確にすることが求められます。しかし人とのコミュニケーションでは、状況を察して適切な対応を取ることも、ときには必要です。顧客との要件定義や開発チームとの連携など、対人間のコミュニケーションにおいて力を発揮するでしょう。
SIerで働くメリット
SIerで働く魅力の一つは、大規模なシステム開発に携われることです。大手企業の基幹システムや社会インフラを支えるシステムなど、スケールの大きなプロジェクトに関わることで、自身の成長を実感できるでしょう。
幅広い業務経験を積めることも大きな魅力です。要件定義から設計、開発、テストまで、システム開発の一連の流れを経験することで、ITエンジニアとしての総合的なスキルを身につけることができます。
さらに、多様な業界の知識を得られることもメリットです。金融、製造、流通など、様々な業界のシステム開発に関わることで、ビジネスに関する深い知識を習得できます。
SIerで働くデメリット
SIerで働くデメリットとして、長時間労働が挙げられます。SIerは納期ありきの仕事なので、プロジェクトの納期が迫ったり、トラブルが発生したりした場合、どうしても長時間労働になりがちです。
また、納期が迫ったり難しい案件だと現場の雰囲気がピリピリしてストレスを感じることも。精神的なタフさが求められます。
デメリットではありませんが、IT業界は技術の移り変わりが速いため、アップデートしないと技術が陳腐化してしまいます。SIerには常に自主的に学び続ける姿勢が求められます。
文系出身でもSIerで成功するためのポイント
文系出身でもSIerで成功するためのポイントを以下にまとめました。
- 基礎的なIT知識を身につける: プログラミング言語、データベース、ネットワークなどの基礎知識を習得しましょう。
- コミュニケーション能力を磨く: 顧客や開発チームとの円滑なコミュニケーションを心がけましょう。
- 問題解決能力を高める: 論理的に考え、問題の本質を捉え、解決策を提案できる力を養いましょう。
- 新しい技術への興味を持ち続ける: IT業界は常に変化しています。新しい技術への興味を持ち、積極的に学ぶ姿勢が大切です。
SIerに向いている人の特徴
SIerに向いている人の特徴を解説します。
論理的思考能力がある
SIerの仕事は、複雑なシステムを設計し、問題解決を行うことが求められます。最初からいきなりシステム設計に携わることは少ないかもしれませんが、どのフェーズにおいても、 論理的に考え、複雑な問題を構造化し、最適な解決策を導き出す能力が求められます。
- 顧客の漠然とした要望から、具体的なシステム要件を導き出す
- システムの不具合が発生した場合、原因を分析し、適切な対策を講じる
- 大量のデータを分析し、そこから意味のある情報を抽出する
コミュニケーションスキルがある
SIerは、顧客とのやり取り、チームメンバーとの協力など、様々な人とのコミュニケーションが不可欠です。そのため、 自分の考えを相手に的確に伝え、相手の意見を聞き、理解する能力 が求められます。
- 顧客のニーズを正確に把握し、システムに反映させる
- チームメンバーと協力し、プロジェクトを円滑に進める
- 上司やクライアントに、プロジェクトの進捗状況を報告する
ストレス耐性がある
SIerの仕事は、納期に追われたり、予期せぬトラブルが発生したりと、ストレスを感じることが多いです。そのため、 ストレスに強く、冷静さを保ち、困難な状況でも諦めずに取り組むことができる 人が求められます。
- プロジェクトの遅延に直面しても、冷静に対処し、解決策を模索する
- 顧客からの厳しい要求にも、冷静に対応し、信頼関係を築く
- 不安定な状況下でも、モチベーションを維持し続ける
新しい技術を学ぶ意欲がある
IT業界は、技術の進化が非常に速い業界です。常に新しい技術やツールが登場し、それらを習得して業務に活かすことが求められます。そのため、SIerに向いている人は、新しい技術に対して常にアンテナを張り、積極的に学ぶ意欲を持っていることが重要です。
- 最新のプログラミング言語を独学で学ぶ
- IT系のセミナーや勉強会に積極的に参加する
- 新しい技術に関する情報収集を習慣化する
チームワークを大切にする
SIerの仕事は、多くの場合、チームでプロジェクトを進めていきます。顧客との折衝、システム設計、プログラミング、テストなど、様々な役割を担うメンバーと協力して、一つのシステムを作り上げていきます。そのため、SIerに向いている人は、チームの一員として協力し、プロジェクトを成功させることができることが重要です。
- チームメンバーの意見を尊重し、積極的にコミュニケーションを取る
- 自分の役割だけでなく、チーム全体の目標達成のために貢献する
- 困っているメンバーを助け、チーム全体の士気を高める
SIerに必要なスキル
SIerに必要な知識は、多岐に渡ります。学生の時点でこれらのスキルをすべて身につけるのは不可能に近く、就職してから徐々に身につけていくものとなります。
- IT基礎知識
- 特定のプログラミングスキル
- ネットワークの知識
- データベース管理の知識
- 問題解決能力
IT基礎知識
SIerで働く上で、ITに関する基礎知識は必須です。具体的には、以下の知識が求められます。
- コンピュータの仕組み:ハードウェア、ソフトウェア、OSの基本的な仕組みを理解する
- ネットワーク:LAN、WAN、インターネットなどのネットワークの仕組みとプロトコルを理解する
- データベース:リレーショナルデータベース、NoSQLデータベースなどの構造と操作方法を理解する
- オペレーティングシステム:Windows、LinuxなどのOSの操作方法と特徴を理解する
プログラミングスキル
SIerでは、様々なプログラミング言語が使われます。プロジェクトによって必要な言語は異なりますが、以下のような言語を習得しておくと有利です。
- Java:エンタープライズシステム開発で広く利用されている汎用的な言語
- Python:データ分析や機械学習など、近年注目されている言語
- C#:Windowsアプリケーション開発やゲーム開発などで利用される言語
- JavaScript:Webアプリケーション開発で必須の言語
ネットワークの知識
ネットワークの知識は、システム全体の設計やトラブルシューティングに不可欠です。
以下の知識を深めましょう。
- TCP/IP:ネットワーク通信のプロトコル
- ルーティング:ネットワーク上のデータの経路選択
- スイッチング:ネットワーク上のデータの転送
- セキュリティ:ネットワークのセキュリティ対策
データベース管理
データベースは、システムのデータを格納し、管理する上で重要な役割を果たします。データベースの設計や管理の知識は、大規模なシステム開発には不可欠です。
以下の知識を習得しましょう。
- SQL:データベースを操作するための標準的な言語
- データベース設計:データベースの構造を設計する
- データベースチューニング:データベースの性能を最適化する
問題解決能力
システムのトラブルシューティングや、顧客の要望に応えるためには、問題解決能力が求められます。
- ロジカルシンキング:問題を構造化し、論理的に考える
- 分析力:問題の原因を分析し、本質を捉える
- 創造力:新しい解決策を提案する
文系出身者がSIer就職を成功させるポイント
文系出身者がSIer就職を成功させるポイントを解説します。
研修制度の整った企業を選ぶ
文系出身者は、研修制度の整った企業を選ぶようにしましょう。最初に数か月研修があったり、OJTで指導してもらえたりと、働きながら技術を身につけられる環境があれば、文系出身者でもIT技術を身につけられるでしょう。
研修だけに頼るのではなく、独学で技術を身につける努力も必要です。
資格を取得しておく
ITに関する資格取得もおすすめです。知識の習得にも役立ちますし、面接でやる気のアピールにもつながります。
まずは「ITパスポート」という国家資格を目指すとよいでしょう。ITパスポートは、一般社会人向けのITに関する知識を認定する試験です。取得したからといってIT業界で強力な武器になるわけではありませんが、IT業界を目指す上で最低限の知識を持っている証明になります。
まとめ
文系出身者でも、SIerで活躍している人はいます。採用されるのに重要なのは、なぜIT業界に興味を持ったのか、どのように働きたいか、熱意をアピールすることです。
IT業界は実力主義です。やる気と努力を継続すれば、きっとキャリアを築けるでしょう。