セキュリティエンジニアは、ネットワークやシステム、データなどを不正アクセスや情報漏洩から守るエキスパートです。
近年のサイバー攻撃の増加に伴い、セキュリティエンジニアの存在はますます重要になっています。一方で懸念されているのは、AIなどの発達により、仕事がなくなるのではないかということです。
この記事では、セキュリティエンジニアという職種がなくなる不安を払拭し、将来性やキャリアパスについて解説します。
セキュリティエンジニアが「なくなる」と言われる理由
AIなどの進化による業務の自動化と、フルスタックエンジニアの台頭によりセキュリティエンジニアがなくなると言われています。このような技術進歩と人材の変化が、セキュリティエンジニアの役割を変えつつあります。
AIや業務の自動化で仕事がなくなる
AIなどの技術の進化で危惧されているのは、従来人手で行っていた定型業務が自動化され、セキュリティエンジニアの仕事がなくなるのではないかということです。
特に単純作業は機械に代替される可能性が高いと考えられています。
しかし、複雑なサイバー攻撃への対策や、新たな脅威の発見・分析、セキュリティ戦略の立案など、単純な自動化では対処しきれない高度な技術と専門知識が求められる部分も多く存在します。
フルスタックエンジニアの活躍
近年、Webシステムやアプリケーション開発においては、フロントエンドからバックエンド、インフラまで広範囲に携わるフルスタックエンジニアが注目されています。
そのため、セキュリティの役割もフルスタックエンジニアに包括されてしまうのではないかと懸念されています。
確かに、フルスタックエンジニアは多岐にわたるスキルを持ち、プロジェクト全体を俯瞰して管理することが可能です。
しかし、セキュリティに関しては専門的な知識と経験が必要なため、専門のセキュリティエンジニアの役割が軽視されることはないでしょう。
セキュリティエンジニアは本当になくなる?
AIの進化による自動化の影響はあるものの、セキュリティエンジニアの需要は今後ますます高まると予測されています。
IT技術による自動化が進展する中でも、複雑なサイバー攻撃への対応や脆弱性の検出には専門知識が不可欠です。
人手不足により需要が高い
サイバー攻撃の高度化や脅威の多様化に伴い、セキュリティ対策は非常に重要な課題となっています。
しかし、高度な専門性を持つセキュリティエンジニアの人材不足は深刻で、今後更に需要が高まる見込みです。
サイバー攻撃は巧妙化し、その影響も広範囲に及ぶため、セキュリティエンジニアの重要性は増しています。
企業は、人材確保のために、セキュリティ教育やトレーニングの強化、セキュリティエンジニアの育成に力を入れることが必要です。
情報セキュリティの重要性が高い
近年のIoT機器の普及やクラウド利用の拡大により、企業や組織が扱うデータ量は増加しています。企業が重要な情報資産を守るためにも、セキュリティエンジニアの存在は欠かせません。
機密情報の漏洩は企業に甚大な損害を与えます。セキュリティ対策の重要性は高まる一方です。
クラウド環境は、データの保存・管理に関するセキュリティ課題が複雑化しており、専門的な知識とスキルが求められます。
情報を取り巻く環境が複雑になる中で、セキュリティエンジニアが果たすべき役割は、最新の技術や手法を駆使し、システムの安全性を確保することです。
セキュリティの専門性が求められている
脆弱性の特定、侵入検知、不正アクセス防止など、幅広い知識とスキルを必要とすることから、セキュリティには高度な専門性が求められます。
AIではこうした専門業務を代替することは困難です。むしろ、セキュリティエンジニアの業務をサポートする役割が期待されています。
具体的にAIが担える業務は、膨大なデータの解析を迅速に行い、潜在的な脅威を早期に検出することです。AIはセキュリティエンジニアの重要なパートナーとして機能し、セキュリティ対策の強化に貢献することが期待されています。
IT業界以外でも需要がある
金融機関や医療機関、官公庁など、セキュリティ対策が求められる分野は多岐にわたります。IT業界だけではなく、様々な業種・業界でセキュリティエンジニアが必要不可欠な存在です。
金融機関では顧客の財産を守るための高度なセキュリティ対策が必要とされ、医療機関では患者のプライバシー保護が最優先事項となります。
官公庁においても、国民の個人情報や国家機密を保護するため、厳重なセキュリティ対策が必要です。
セキュリティエンジニアに必要なスキルと知識
セキュリティエンジニアはなくなると心配する声もありますが、実際には需要が高まるばかりです。
ただし、現場で活躍するためには高度なスキルと知識が必要です。これから紹介する知識を身に付けスキルアップし、セキュリティエンジニアとしての市場価値を高めましょう。
ITに関連する全般的なスキル
セキュリティエンジニアには、主要なOS(Windows、Linux)やミドルウェア(Apache、Nginx)の運用管理、PythonやJavaなどのプログラミングスキルといったIT全般の基礎知識が必要です。
さらに、システム設計の経験があれば、セキュリティアーキテクチャの構築に役立ちます。セキュリティエンジニアとしてスキルを向上させ、効果的なセキュリティ対策を行うために幅広いIT知識を身に付け、実務経験を積みましょう。
ネットワーク関連の知識
ネットワーク関連の知識は、脆弱性を特定し、適切な防御策を講じるために非常に重要です。TCPやIP等のプロトコル、ルーティング、ファイアウォール、VPNなど、ネットワークに関する幅広い専門知識が不可欠です。
また、ネットワークのトラフィックを監視し、異常な活動を早期に検出する能力も求められます。
総じて、ネットワークに関する深い理解と実務経験が、効果的なセキュリティ対策を支える基盤となります。
暗号化に関する知識
データの機密性と完全性を守るために、暗号化技術の仕組みを理解することが重要です。公開鍵暗号方式や共通鍵暗号方式、ハッシュ関数など、様々な暗号技術について学ぶ必要があります。
以下のような暗号化技術は、多岐にわたるセキュリティ対策に利用されます。
- データの暗号化と復号化
- デジタル署名
- データの整合性確認
暗号化技術を正しく理解し適用することで、情報の漏洩や改ざんを防ぎ、安全な通信とデータ管理が実現できるのです。
認証技術に関する知識
不正アクセスを防ぐためには認証技術の知識も欠かせません。ID/パスワード認証に加え、バイオメトリクス認証や多要素認証など、最新の認証手法を習得する必要があります。
1つの認証方法に依存することなく、複数の認証方法を利用することで複雑なセキュリティ対策の実現が可能です。
例えば、身体を使って本人を特定するバイオメトリクス認証では以下のような認証方法があります。
- 指紋
- 顔認証
- 虹彩認証
最新の認証技術を理解し、複数の認証要素を組み合わせることでセキュリティを強化でき、システムへの不正アクセスを効果的に防止できるのです。
セキュリティエンジニアに向いている人の特徴は?
セキュリティエンジニアには高い倫理観と厳格な規律が求められます。セキュリティに関する機密情報や権限を不正に利用してはなりません。
また、サイバー攻撃の手口は日々進化しているため、常に最新の脅威動向を把握し続ける危機管理能力が必要です。
さらに、セキュリティ上の問題について、上層部や関係者に分かりやすく説明できるコミュニケーション力も求められます。サイバーセキュリティは組織の存亡に係わる重要課題であることを自覚し、強い責任感を持たなければなりません。
セキュリティエンジニアが転職でキャリアアップするポイント
セキュリティエンジニアには様々なキャリアパスが用意されています。
上位のセキュリティアーキテクトやコンサルタントを目指せるほか、ホワイトハッカーやセキュリティアナリストなど専門分野に特化するキャリアもあります。
セキュリティエンジニアとして培ったスキルや経験を活かしてキャリアアップを成功させるためには、以下の2つのポイントを意識することが大切です。
マネジメント職を目指す
セキュリティの専門知識に加え、マネジメント能力を身につけていれば、セキュリティリーダーやマネージャーなどの管理職を目指せます。
部門全体のセキュリティポリシーの策定や、セキュリティ体制の確立など、幅広い視野が必要とされる責任あるポジションです。
組織全体のセキュリティ戦略を策定し、リソースの効果的な配分やチームの指導・育成を行うことが求められます。優れたコミュニケーション能力とリーダーシップが、セキュリティ対策の成功に不可欠です。
上位のエンジニアを目指す
セキュリティエンジニアの上位キャリアとして、セキュリティアーキテクトやセキュリティコンサルタントなどがあります。高度な専門性が求められ、組織全体のセキュリティ設計や対策の立案などを担う重要な役割です。
セキュリティアーキテクトは、企業のシステム全体のセキュリティ構築を指揮し、脅威の分析や防御策の設計を行います。
また、セキュリティコンサルタントは、クライアントのセキュリティ状況を評価し、最適な改善策を提案するアドバイザーです。
セキュリティエンジニアのキャリアパス
セキュリティエンジニアの将来のキャリアパスを詳しく見ていきましょう。セキュリティエンジニアとして経験を積みスキルが向上した後に目指せる、代表的な職種を紹介します。
いずれも情報セキュリティのスペシャリストですが、担当する業務内容に違いがあります。自分のキャリア目標に合った職種を選びましょう。
セキュリティアナリスト
ログ解析やマルウェア分析、脆弱性診断などを行い、セキュリティインシデントを監視・分析するのがセキュリティアナリストの仕事です。
サイバー攻撃の手口を熟知し、迅速かつ適切な初動対応を行う必要があります。企業のセキュリティ水準を常に高めるため、専門的な知見が求められる重要な職種です。
セキュリティアナリストは、日々の監視を通じて異常な活動を検出し、トラブルや事故が発生した時のために、対応策を講じます。攻撃手法のトレンドを把握し、最新の防御策を導入することで、企業のセキュリティ体制を強化しています。
セキュリティコンサルタント
セキュリティコンサルタントの役割は、DX化を進めたい企業や組織のセキュリティ戦略の立案、セキュリティ対策の実施を支援することです。
高い専門性に加え、顧客の課題を的確に捉え、ニーズに合わせた最適な解決策を提案できる力が必要とされます。経営層と密にコミュニケーションを取りながら、組織全体のセキュリティレベル向上に尽力します。
主な仕事内容は、最新の脅威動向を把握し、クライアントのビジネスに適した防御策を構築することで、持続的なセキュリティ強化を実現することです。
セキュリティアーキテクト
組織全体のセキュリティ設計を統括するのがセキュリティアーキテクトの役割です。
各システムやネットワーク、データセンターなどのセキュリティアーキテクチャを統合的に設計し、実装を監督します。組織の将来を左右する重要な職責を担い、高度な専門知識と戦略的視点が求められる最上位の職種です。
セキュリティアーキテクトは、企業の情報資産を保護し、持続可能なセキュリティ体制を構築するための中心的な役割を果たします。
ホワイトハッカー
ホワイトハッカーは、企業や組織に雇われて、システムの脆弱性を見つける専門家です。不正アクセスの手口に精通しており、攻撃者の視点からシステムをテストし、セキュリティ上の弱点を探り当てます。
発見した脆弱性について事前に対策を立てることで、セキュリティの穴を防ぎます。
サイバー攻撃にさらされる前に脆弱性を特定し、システムのセキュリティレベルを高めるのがホワイトハッカーです。
セキュリティエンジニアに関するよくある質問
セキュリティエンジニアを目指すにはどうすればよいのでしょうか?
ここでは、セキュリティエンジニアを目指す人が抱きやすい疑問にお答えします。
セキュリティエンジニアは未経験でもなれる?
完全な未経験からスタートするのは難しいですが、IT業界での経験があれば、セキュリティエンジニアを目指す転職が可能です。
基礎的なIT知識とスキルをしっかり身につけることで、セキュリティ分野でのキャリアアップを図れます。
セキュリティエンジニアにおすすめの資格は?
代表的な資格には、情報セキュリティ監査やリスク分析に関するCISSP、ネットワークセキュリティに関するCCNAなどがあります。
資格を取得することで、セキュリティ分野での信頼性が高まり、より高度な職務に挑戦する機会が増えるでしょう。
まとめ
本記事では、セキュリティエンジニアの将来性やキャリアパスについて解説しました。
AIなどの普及による業務の自動化が危惧されていますが、サイバーセキュリティの需要は今後ますます高まると予想されています。
セキュリティエンジニアの専門性は非常に重要であり、IT業界のみならず、様々な分野で活躍できる可能性があります。