大手企業の個人情報漏洩がニュースになるなど、ITにおけるセキュリティが重要なのは言うまでもありません。

私たちが安心してITを使用できるのはセキュリティエンジニアが日夜働いているおかげです。

この記事ではセキュリティの仕事内容や必要スキルなどを解説します。

セキュリティエンジニアの仕事内容

セキュリティエンジニアの仕事内容は以下の5つに大別されます。

  • 企画・提案
  • 設計
  • 実装
  • テスト
  • 運用・保守

企画・提案

クライアントから要件をヒアリングし、セキュリティシステムの企画・提案をします。システムの根幹を握る、重要なフェーズです。

まずは企業の現状をヒアリングし、セキュリティに関する課題や目標を明確にします。その上で、最新のセキュリティ技術やトレンドを踏まえ、最適なセキュリティ対策を提案します。

クライアントが抱える具体的なセキュリティリスクを洗い出し、優先順位付けを行うことも重要です。たとえば個人情報漏洩のリスクが高い場合は、情報漏洩対策を強化する提案をおこなうなどが該当します。また、最新のサイバー攻撃手法を分析し、対策を提案することも求められます。

さらに、セキュリティ対策の費用対効果を考慮し、企業にとってもっとも効果的な投資となるような提案を行うことも重要です。

設計

企画段階で決定されたセキュリティ対策に基づき、ネットワーク構成やセキュリティポリシー、アクセス制御など、システム全体のセキュリティを担保するための詳細な設計図を作成します。

設計にあたっては、セキュリティと利便性のバランスを考慮することが重要です。たとえば、セキュリティを過度に重視しすぎると、業務効率が低下してしまう可能性があります。そのため、セキュリティレベルを適切に設定し、業務に支障が出ないよう配慮するなどが該当します。

また、システムの拡張性も考慮した設計を行うことが重要です。企業は常に変化し続けているため、将来的なシステムの拡張に対応できるような設計をおこなう必要があります。近年では、データをクラウド上で管理するケースが増えているため、クラウド環境を活用できる設計が求められるでしょう。

実装

設計図に基づき、実際にセキュリティシステムを構築します。ファイアウォールや侵入検知システム、暗号化技術などのセキュリティ製品を導入し、ネットワークやシステムの設定をおこないます。

実装にあたっては、マニュアルやガイドラインを厳密に守り、ミスなく作業を進めることが重要です。また、構築したシステムが設計通りに動作しているか、テストを実施することも重要です。

テスト

構築したセキュリティシステムに脆弱性がないか、様々な角度からテストします。具体的には、ハッキングシミュレーションや脆弱性診断ツールなどを利用し、システムの弱点を探し出します。

テストで見つかった脆弱性は、設計・実装に戻り、対応策を検討して修正する必要があります。また、テスト結果に基づいて、セキュリティポリシーやシステム構成を見直すことも重要です。

運用・保守

構築したセキュリティシステムは、一度設置すれば終わりというわけではありません。常に最新の脅威に対応するため、定期的なパッチ適用やセキュリティ対策の強化が求められます。

システムのログを監視し、異常なアクセスやセキュリティインシデントが発生していないかを確認する必要があります。もし、インシデントが発生した場合には、迅速に対応し、被害を最小限に抑えましょう。

セキュリティに関する法規制や業界のガイドラインが変更された場合にも、それに対応したシステムの改修を行う必要があります。

セキュリティエンジニアの年収

セキュリティエンジニアに特化した公的な収入調査結果はありません。

セキュリティエンジニアの年収は地域や企業によって異なりますが、株式会社カカクコムが運営する「求人ボックス給料ナビ」によると、セキュリティエンジニアで正社員の平均年収は473万円というデータがあります。

参考:求人ボックス給料ナビ|セキュリティエンジニアの仕事の年収・時給・給料(求人統計データ)

セキュリティエンジニアに必要な知識・スキル

セキュリティエンジニアに必要な知識・スキルは以下のとおりです。

  • コミュニケーションスキル
  • OS、アプリケーション、ファイアウォール等の知識
  • ウイルスや不正アクセス手法の知識
  • 情報セキュリティマネジメントへの理解
  • プログラミングスキル

コミュニケーションスキル

セキュリティエンジニアにとってコミュニケーションスキルは非常に重要です。

クライアントに最適なセキュリティシステムを構築するためには、クライアントの課題を的確にヒアリングする必要があります。クライアントは、自分達と同程度の十分なIT知識を持ち合わせているとは限りません。

どのような状況でも、クライアントが抱えている課題や必要な機能を推測しながらヒアリングしなくてはならないため、クライアントの言いたいことを推測しながら、クライアントにわかる言葉で説明するスキルが求められます。

OS、アプリケーション、ファイアウォール等の知識

セキュリティエンジニアは、様々なITシステムの構造を深く理解している必要があります。特に、OS(オペレーティングシステム)、アプリケーション、ネットワーク機器(ファイアウォールなど)に関する知識は不可欠です。これらのシステムの仕組みを理解することで、それぞれのシステムが抱える脆弱性を特定し、適切な対策を講じることができます。

例えば、Windows OSのファイル共有設定の誤りが、外部からの不正アクセスに繋がる可能性があります。また、Webアプリケーションの脆弱性を利用した攻撃は、近年特に増加しています。セキュリティエンジニアは、これらのシステムの脆弱性を常に把握し、最新のセキュリティパッチを適用したり、セキュリティ設定を見直したりする必要があります。

ウイルスや不正アクセス手法の知識

サイバー攻撃は日々進化しており、新しい種類のウイルスや不正アクセス手法が常に登場しています。セキュリティエンジニアは、これらの最新の脅威に関する知識を常にアップデートしておく必要があります。

たとえば、ランサムウェアと呼ばれる種類のマルウェアは、企業のデータを暗号化し、復号の代わりに身代金を要求する攻撃手法です。また、フィッシング攻撃と呼ばれる手法は、偽のウェブサイトやメールを利用して、ユーザーの個人情報を盗み出す攻撃手法です。

セキュリティエンジニアは、これらの攻撃手法の仕組みを理解し、対策を講じる必要があります。

情報セキュリティマネジメントの知識

セキュリティエンジニアは、単に技術的な知識だけでなく、情報セキュリティマネジメントに関する知識も必要です。

情報セキュリティマネジメントとは、企業全体のセキュリティレベルを向上させるための体系的な取り組みです。セキュリティポリシーの作成、リスクアセスメントの実施、インシデント対応計画の策定など、様々な業務に関わります。 

たとえば、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の構築は、企業の情報セキュリティレベルを向上させる上で重要な取り組みです。セキュリティエンジニアは、ISMSの構築を支援したり、ISMSの運用状況を監査したりする役割を担うこともあります。

プログラミングスキル

セキュリティエンジニアは、プログラミングスキルを活かして、セキュリティシステムを開発したり、既存のシステムをカスタマイズしたりすることができます。

また、スクリプト言語を用いて、自動化ツールを作成することも可能です。これにより、煩雑なセキュリティ作業を効率化することができます。 

プログラミングスキルは、セキュリティエンジニアの幅を広げ、より高度なセキュリティ対策を実現するための重要なスキルです。みずからプログラミングをおこなう機会がなくても、知識として持ち合わせておくほうがよいでしょう。

セキュリティエンジニアに役立つ資格

セキュリティエンジニアに資格は必須ではありません。しかし、資格取得をすることで客観的な能力の証明になるため、スキルアップのために資格取得にチャレンジすることをおすすめします。

セキュリティエンジニアに役立つ資格をいくつか紹介します。

  • 情報セキュリティマネジメント
  • 情報処理安全確保支援士試験
  • 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
  • シスコ技術者認定

情報セキュリティマネジメント

情報セキュリティマネジメント試験は、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が実施する、情報セキュリティの基本的な知識を問う国家資格です。

情報セキュリティ全般の知識や管理、各種対策、関連法規などに加えて、ネットワークやデータベース、システム監査、経営管理など関連分野の知識も出題されます。

セキュリティの入門資格としては取得しやすいため、IT未経験者や初心者におすすめの資格です。

参考:独立行政法人 情報処理推進機構|情報セキュリティマネジメント試験

情報処理安全確保支援士試験

情報処理安全確保支援士試験は、IPAが実施する、セキュリティに関する幅広い知識とスキルを有していることを証明する国家資格です。取得することで、セキュリティコンサルタントやセキュリティ監査員など、より専門的な分野で活躍することができます。

セキュリティのプロフェッショナル向けの資格となっており、難易度は高いです。

参考:独立行政法人 情報処理推進機構|情報処理安全確保支援士試験

基本情報技術者試験・応用情報技術者試験

基本情報技術者試験および応用情報技術者試験は、IPAが実施する、情報処理技術者試験のうちの1つです。セキュリティに限らず総合的なITの知見を問われます。

基本情報技術者試験はIT専門職として歴の浅い人向け、応用情報技術者試験は更にレベルの高い試験です。

参考:独立行政法人 情報処理推進機構|基本情報技術者試験

シスコ技術者認定

シスコ技術者認定は、ネットワーク機器の大手ベンダーであるシスコシステムズが提供する資格です。セキュリティエンジニアにとって、ネットワークに関する深い知識は必須であり、シスコ技術者認定を取得することで、ネットワークセキュリティの専門知識を深めることができます。

とくに、CCNA SecurityやCCNP Securityなどのセキュリティに特化した資格は、セキュリティエンジニアとしての実務能力を証明する上で役立つでしょう。

参考:Cisco|シスコ認定試験

セキュリティエンジニアに向いている人

セキュリティエンジニアに向いている人の特徴をいくつか挙げました。

  • 責任感の強い人
  • 縁の下の力持ちタイプの人
  • 細かい部分に気がつく人
  • 最新技術をキャッチアップできる人

責任感の強い人

セキュリティエンジニアは、企業の大切な情報資産を外部からの攻撃から守り、内部からの情報漏洩を防ぐ重要な役割を担っています。そのため、強い責任感を持って仕事に取り組むことができる人が向いています。

万が一、セキュリティインシデントが発生した場合には、迅速に対応し、被害を最小限に抑える必要があります。また、常に最新の脅威に目を光らせ、新たな対策を講じることも求められます。

縁の下の力持ちタイプの人

セキュリティエンジニアの仕事は、システムが正常に稼働している限りは、あまり目立つことはありません。そのため、縁の下の力持ちとして、目立たないところで貢献できることに喜びを感じられる人が、セキュリティエンジニアに向いています。

細かい部分に気がつく人

セキュリティ対策は、些細なミスが大きな問題に繋がる可能性があります。たとえば、設定ミスやパッチの適用漏れなどが、攻撃のきっかけとなるため、どんなささいなミスも見逃せません。

そのため、細かい部分にまで気を配り、ミスをなくすための慎重さが求められます。

最新技術をキャッチアップできる人

サイバー攻撃の手法は日々進化しており、セキュリティエンジニアも常に新しい技術を積極的に学び、サービス内容に反映させることが求められます。多くの企業でクラウド化が進んでいることなど、最新のITトレンドをキャッチし、乗り遅れないようにすることも大切です。

また、新しいプログラミング言語やツールを習得することも、セキュリティエンジニアとしてのキャリアアップにつながります。

セキュリティエンジニアのキャリアパス

セキュリティエンジニアとしてスキルを極める道もありますが、ここではセキュリティエンジニアから他職種へのキャリアパスを解説します。

  • プロジェクトマネージャー
  • フルスタックエンジニア
  • ITスペシャリスト

プロジェクトマネージャー

プロジェクトマネージャーは、開発プロジェクト全体の統括をするマネジメント職です。実際に開発作業に携わることは少ないですが、開発経験を活かして、スケジュール管理や関係者との調整などをおこない、開発プロジェクトには欠かせない存在です。

ひと通りの開発経験を積み、マネジメント系にキャリアを進めたい人におすすめです。

フルスタックエンジニア

フルスタックエンジニアは、Webエンジニアがおこなう開発業務と、インフラエンジニアがおこなうITインフラ基盤構築の両方をおこなうエンジニアです。

セキュリティエンジニアなどのインフラエンジニアがフルスタックエンジニアを目指すには、インフラ構築経験に加えてシステムの開発経験および複数のプログラミング言語の習得が求められます。

難易度は高いものの、IT人材が不足している今、非常に需要の高い職種です。

ITスペシャリスト

ITスペシャリストとは、専門分野で高いITスキルを保有し、技術力でプロジェクトを牽引するエンジニアのことをいいます。

セキュリティエンジニアは専門性の高い職種です。その専門性を極め、ITスペシャリストとして活躍することも可能です。

またセキュリティコンサルタントとして、企業のセキュリティレベル向上を支援したり、CISO(最高情報セキュリティ責任者)として、組織全体のセキュリティ戦略を策定したりするポジションも視野に入るでしょう。

まとめ

セキュリティエンジニアは仕事の成果が表に出るタイプの職種ではありません。クライアントにとってはセキュリティに異常のないことが当たり前で、言い換えると「完璧で当たり前」の仕事です。

やりがいを感じるか辛いと感じるかは、その人の特性によりますが、ITインフラにおいて欠かせない重要な仕事であることは間違いありません。将来性のある仕事ですので、興味のある人は、セキュリティエンジニアにぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

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