SE(システムエンジニア)はうつ病などの精神疾患発症率が高いことをご存じでしょうか。現在、SEとして働いていて、精神的にしんどさを抱えている人も多いことでしょう。

SEの仕事環境は、実はメンタルを病みやすい要因が多くあります。そのため、メンタルが弱いと自覚している人だけでなく、もともとメンタルが弱くない人も、精神的にやられてしまうケースが発生するのです。

この記事では、SEがメンタルを壊しやすい理由と、メンタルが弱い人もそうでない人も精神的にダウンするのを回避する方法を解説します。

SEがメンタルを壊しやすい理由

厚生労働省の調査によると、SE含む情報サービス業における、精神疾患での労災請求件数は、全業種中8位です。

【精神障害の労災請求件数の多い業種ランキング(令和5年度)】

分類件数
社会保険・社会福祉・介護事業494
医療業390
道路貨物運送業152
その他の事業サービス業134
その他の小売業111
総合工事業105
飲食店105
情報サービス業102
学校教育100
各種商品小売業81
厚生労働省|精神障害に関する事案の労災補償状況(令和5年度)

日経クロステックが調査した、IT業界の職種別、こころの病と診断された割合でも、SEはプログラマーに次いで2位となっています。

参考:日経クロステック|調査編2 「こころの病」にかかる比率、最も高いのはPG、ベンダーはユーザーの1.5倍

SEがメンタル不調に陥ってしまう原因を探っていきます。

仕事量や残業が多い

SEの仕事は、決められた納期に合わせてシステムを納品する場合がほとんどです。

途中でプログラムに不具合が発生した場合、遅れを取り戻すために長時間残業となることも珍しくありません。顧客にITの知識が少ない場合では、システム変更や修正を簡単な作業と思われていることもあり、「同じ納期でこの部分を変更してほしい」など、無茶ぶりをされることも。

そのため、SEは長時間残業が発生しやすく、メンタルヘルス悪化も発生しやすくなります。

裁量権が少ない

IT業界の構造は、官公庁や大手IT企業が受注した案件を子会社に発注、さらにその下の孫会社に発注、というピラミッド構造をしています。建設業界のゼネコンと似ていることから「ITゼネコン」と呼ばれることもあります。ピラミッド構造の下に行けば行くほど、裁量権が少なくなります。

親会社が無理な納期を提示してきても下請け会社は「No」と言いにくく、ストレスフルな職場環境となりがちです。

成果物が目に見えにくい

SEは顧客の要望に合わせてシステムを構築する仕事のため、成果物が目に見えにくい現実があります。システムは正常に動いて当然と思われがちなため、感謝の言葉をかけられることも少ないかもしれません。

建設業だったら建築物、接客業だったら顧客からの「ありがとう」の言葉など、やりがいが見える・分かる形となって表されることでやりがいにつながるもの。SEは激務なのにやりがいを実感しづらく、メンタル不調に陥る一因となります。

責任が重い

SEは、納期を厳守することに加えて、ひとつのバグが致命的な欠陥となるリスクがあるなど、責任の重い仕事です。「納期に遅れてはいけない」「失敗してはいけない」というプレッシャーがストレスとなり、メンタルに負荷をかけてしまいます。

日光を浴びる機会が少ない

人間は日光を浴びると、脳内からセロトニンという物質が分泌されます。セロトニンは「幸せホルモン」といわれており、適切に分泌されることで精神の安定につながります。SEはデスクワークのため、日中に日光を浴びる機会がほとんどありません。セロトニンの分泌も少なくなり、ストレスへの対応が難しくなってしまうのです。

セロトニンは夜になると「メラトニン」という睡眠を司る物質に変化します。日中にセロトニンが十分に分泌されないとメラトニンも不足し、良質な睡眠をとりづらくなります。睡眠不足は抑うつ状態など精神不調のトリガーとなるため、メンタルを壊しやすくなってしまうのです。

メンタルを壊しやすいSEの特徴

SEはハードな仕事ですが、メンタルに不調をきたさず働き続ける人とそうでない人がいるのも事実。ここでは、メンタルを壊しやすいSEの特徴を解説します。

下記に書いてあることは、当てはまる人はメンタルが弱い奴、ということではありません。どれだけ強靭なメンタルの持ち主でも、このような思考を続けていれば誰でもメンタルが壊れる、といったものです。当てはまるからといって「自分はSE失格だ」と思わないでくださいね。

完璧主義

SEの仕事はミスが致命的なダメージとなる可能性があるため、ミスなく業務を遂行することは重要です。しかし完璧主義の人は、細かいミスまで気にしてしまう傾向にあるため、たとえプロジェクトが上手くいったとしても「あのとき〇〇していればもっと上手くいったのに…」など、自己否定をしてしまいがちです。

たとえ誰からも責められていないとしても、完璧にできなかった自分が許せず、精神的に自滅してしまうリスクがあります。

コミュニケーションが苦手

SEは顧客からのヒアリングやチームの仲間への報告など、コミュニケーション能力が求められる場面があります。

SEに求められるコミュニケーション能力は、その場を盛り上げるような面白い話をする能力ではなく、相手の話を聞く力や、会話の中から最適解を見つけ出すスキルです。これらのスキルに苦手意識があると、コミュニケーションを取るのが苦痛となり、メンタルを病みやすくなってしまいます。

責任感が強い

責任感が強いことは悪いことではありません。しかしあまりにも責任感が強すぎると「全部自分でやらなければ」と、助けを求めることができなくなってしまいます。

その結果、オーバーワークとなってしまい、最悪の場合、プロジェクトに支障が出ることも。そして責任感の強さから自己嫌悪に陥る、という負の循環にはまってしまいます。

メンタルを保つために心がけたい考え方

誰でも心身共に健康を維持して働き続けたいですよね。ここでは、メンタルを保つために心がけたい考え方を紹介します。すぐに考え方のクセを直すのは難しいかもしれませんが、頭の片隅に留めておいてもらえると幸いです。

助けを求めることは悪くない

責任感が強い人ほど、助けを求めることを悪としてしまいがちです。でもよく考えてください。仕事本来の目的は何ですか?「あなたが」仕事をこなすことではなく、どのような形であれプロジェクトを遂行することが目的のはず。持ち前の責任感で色々なことを乗り越えてきたと思いますが、物事を俯瞰して捉えることで、本当に自分がやるべきことが分かるはずです。

できないことは「できない」と判断し、必要に応じて助けを求めてください。そうすることでメンタルも守れますし、最終的に自分自身の成長にもつながります。

すべての業務に「完璧」を求めない

細かいところまで「完璧」を求めると精神が破綻します。設計書の作成やプログラミングなど、手を抜けない業務なので完璧を求められますが、システムに直接関係のない業務については、あまり完璧を求めない方が得策です。

たとえば上司とのコミュニケーションにおいて「完璧な部下であること」を求めないなど、抜くところは抜くことを意識するとよいでしょう。

責任感を手放す

SEの仕事は失敗が許されないとはいえ、人間のすることにはエラーはつきものです。不本意にも失敗してしまった場合、もちろん反省は必要ですが、過度に責任を感じるとうつ病など精神の不調に片足を踏み入れることにつながります。

必要な反省はして、その後は「まぁいっか」と責任感を手放すことが重要です。失敗してしまって後悔に押しつぶされそうなときは「まぁいっか」の精神を思い出しましょう。

メンタルが弱いと思われがちなSEの強み

「完璧主義」「責任感が強い」…ひと昔前までは美徳とされていたものが、しなやかなメンタルを求められる今、短所のように扱われることも増えてきました。

しかし物事は表裏一体。メンタルが弱いと思われがちな人も、その特性を活かせば強みとなり得ます。

深い思考能力がある

責任感が強い人や感受性の強い人は、ひとつの物事に対して深く考える傾向にあります。自分自身を納得させるために論理的思考能力を持ち合わせていることが多く、大きな強みとなります。

メンタルが弱いと思われがちな人の論理的思考能力は、トラブルシューティングというよりは、日々の業務の中でじっくり発揮されるでしょう。職場を選べば、その能力を大いに発揮できるはずです。

専門的知識の習得能力が高い

メンタルを病みやすい人は真面目な人が多い傾向にあります。元来真面目なため、与えられたタスクはきちんと遂行しようとします。そのため、難解な専門的知識の習得も、持ち前の真面目さでこなせるのが長所。

また、物事を深く考える傾向にあるため、知識欲からどんどん専門的な知識を吸収していきます。

SEのスキルを活かして自分らしく働ける職場環境

最後に、メンタルが弱い傾向にある人でも、SEのスキルを活かして働ける職場環境を紹介します。

人それぞれ向き不向きがあるため、自分の特性を理解して、自分らしく働ける職場環境を見つけましょう。

フリーランスSE

フリーランスSEとは、組織に所属せず、自分で案件を獲得して業務をおこなう働き方です。自分のペースに合わせて仕事の予定を入れられるため、裁量権がないことにストレスを感じるタイプの人に向いています。

自分で仕事を獲得する必要があるため、コミュニケーション能力や自己管理能力が求められます。この辺りの能力に自信がない人は、かえってメンタル不調に陥ってしまうリスクがあるため注意が必要です。

ルーチンワークがメインの仕事

予想外の出来事や緊急時の対応に苦手意識がある人は、社内SEなどルーチンワークがメインの職種だとストレスを軽減できるでしょう。

社内SEの業務は、社内システムの保守や運用がメインとなるため、突発的なトラブル対応は、システム開発よりは少なくなります。

注意!プロジェクト型の仕事はハードルが高いかも

プロジェクト型の仕事は、長時間労働に加えて突発的なトラブルの対応、チーム内でのコミュニケーションなど、ストレスの要因となる要素が多くあります。納期が近づくとチームの雰囲気もピリピリしやすくなるため、感受性の強い人や責任感の強すぎる人には不向きかもしれません。

職場が合わないと感じたら転職を視野に入れよう

SEは大変な仕事ですが需要は高く、仕事に困るということはないでしょう。ただ、需要があるのと仕事が続けられるのは別の話。自分に合う職場を見つけられないと、せっかくのスキルを十分に活かすことができません。根気よく頑張ることは素晴らしいですが、職場が合わないと感じたら、転職を視野に入れる柔軟性も必要です。

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