エンジニアの知識を持ちながら、顧客に自社製品の営業をするエンジニアをセールスエンジニアといいます。専門職と営業職の2つの顔を持ち、人手不足のIT業界ではとくに需要の高い職種です。
この記事では、セールスエンジニアの業務内容や年収、必要なスキルなどを解説します。セールスエンジニアに興味のある人はぜひ読んでみてください。
セールスエンジニアとは
セールスエンジニアとは、製品の技術的側面から営業をサポートする仕事です。
セールスエンジニアを配置する最大のメリットは、顧客からの質問に即時で回答できることです。ソフトウェアや電子機器を販売する際に、顧客からの質問に対する回答を都度確認していては、スムーズな商談につながりません。また、営業の現場では、ヒアリングから顧客の課題が明らかになる場面も多く、その場で新たな提案が求められます。
顧客との信頼関係を構築し、自社製品をスムーズに販売するのがセールスエンジニアの役割です。
セールスエンジニアの仕事内容
セールスエンジニアの具体的な仕事内容は、企業や製品によって異なりますが、一般的には以下の業務を行います。
顧客へのヒアリングと課題抽出
顧客へのヒアリングは、セールスエンジニアのもっとも重要な仕事のひとつです。営業担当者に同行し、直接クライアントから話を聞き、顧客の課題を明確にしていきます。
ヒアリングで重要なことは、顧客の要望を把握するだけではなく、顧客の発言から、顧客が意識していない課題を抽出することです。顧客はITの専門家でないケースも多く、顧客自身が課題に気づいていないことも多くあります。そのため、ヒアリングを通じて顧客が気づいていない潜在的な課題も発見し、解決策を提案することが求められます。
製品・サービスの説明
自社の製品・サービスの技術的な特徴やメリットを、顧客にわかりやすく説明します。顧客の知識レベルに合わせて、専門的知識を噛み砕いて伝える能力が必要です。
製品への質問に対して、わかりやすくスムーズに回答することも、セールスエンジニアの重要な役割です。顧客は、自分の質問にわかりやすく的確な回答を提供してくれる担当者に信頼感を持ちます。そのため、スムーズな商談のためにセールスエンジニアは重宝されるのです。
デモの実施
セールスエンジニアは自社の製品やサービスの使い方を実演し、プレゼンテーションをおこないます。資料や口頭説明のみではなく、実際の使い方を見せることで顧客の理解を深められるため、商談が成立しやすくなるのです。
商談成立後の営業部門・技術部門の橋渡し
セールスエンジニアの仕事は、営業同行だけではありません。営業部門と技術部門のコミュニケーションがスムーズに進むよう、商談成立後は社内の調整役としての役割が求められます。
商談成立から納品までの間に、クライアントから追加要望が発生することもあります。逆に、技術部門から要望や質問が出ることもあります。両者はしばしば拮抗するケースもあるため、両方の知見を持ったセールスエンジニアが両者の意見をすり合わせ、スムーズな納品に貢献するのです。
アフターサポート
納品後のアフターサポートも、セールスエンジニアの重要な役割です。納品後のトラブルシューティングや操作説明など、顧客が製品を使いやすいようにサポートします。
ソフトウェアやITシステムは納品して終わり、ではなく、必ずといっていいほどアフターサポートが必要となります。アフターサポートの質の良し悪しが、顧客がリピーターとなるかどうかを決めるといっても過言ではありません。
セールスエンジニアの年収
セールスエンジニアに特化した、公的な年収調査データはありません。
大手求人情報サイト「求人ボックス」によると、セールスエンジニアの平均年収は約549万円となっています。
また、年収の幅は広く、364~1,060万円となっているため、経験年数や職場によって年収のバラつきがあることがわかります。
参考:求人ボックス給料ナビ|セールスエンジニアの仕事の年収・時給・給料
セールスエンジニアに求められるスキル
セールスエンジニアには、以下のようなスキルが求められます。
- 幅広い専門知識
- コミュニケーション能力
- 問題解決能力
- 営業力
幅広い専門知識
セールスエンジニアは、ジャンルに特化した知識よりも、IT全般の幅広い知識が求められます。顧客からはありとあらゆる質問が飛んでくるため、広く浅く対応できる知識が必要です。
ITの知識に限らず、顧客の業界に関する知識も必要となります。顧客の課題解決提案をするためには、どのような場面でどのような課題が発生するか、ある程度予測を立てる必要があります。また、顧客からヒアリングをしても、業界の知識がなければ、自社製品を使った課題解決に結びつけることはできません。
もちろん、自社の製品やサービスに関しての知識も必要不可欠です。
コミュニケーション能力
セールスエンジニアにコミュニケーション能力が必要なのは、想像に難くないでしょう。
具体的には以下のような能力が求められます。
- 顧客との円滑なコミュニケーション
- 技術的な内容を分かりやすく説明する能力
- プレゼンテーション能力
技術者同士のコミュニケーションに必要な、筋道を立てて理論的に意思疎通を図る力も必要ですが、それよりも「わかりやすく」「円滑な」コミュニケーション能力が必要です。ときには顧客の無理な要望を、角を立てずにかわす柔軟性も重宝します。
また、自社の製品の魅力を効果的に伝えるためのプレゼンテーション能力も求められます。
問題解決能力
セールスエンジニアは、顧客の課題を捉え、最適な解決策を提案する能力が必要です。
クライアントの伝えたいことを的確に捉え、言葉の裏にある本質的な課題を見抜き、プラスαの提案をできるセールスエンジニアは、現場で活躍できるでしょう。
営業力
セールスエンジニアには、コミュニケーション能力だけではなく、自社の製品やサービスを契約してもらえるようにする、営業力も求められます。極端な話、円滑なコミュニケーションが取れても、契約につながらなければ商談は成功したとはいえません。
信頼関係の構築はもちろんのこと、意思決定につながるような話の流れを作ることや、臨機応変な対応力、丁寧なアフターフォローが重要です。
セールスエンジニアになる方法
セールスエンジニアになる方法は、下記の2通りがメジャーです。
- 技術職からセールスエンジニアになる
- 営業職からセールスエンジニアになる
営業職からセールスエンジニアになる場合、独学でITの知識を身につける必要があります。資格を取得して、客観的に能力を証明できるようにしておくと、なおよいでしょう。
また、大学で情報工学を学び、技術的な知識を得た上でセールスエンジニアになるルートもあります。
セールスエンジニアが在籍するのは大手企業であることが多く、大学卒業を条件とする求人が多いかもしれません。
セールスエンジニアに向いている人
以下のような人はセールスエンジニアに向いているでしょう。
課題解決力がある人
クライアントと関わるのが好きな人
最新知識を身につけていくのが苦にならない人
柔軟な発想力がある人
課題解決力がある人
セールスエンジニアは、顧客が抱える課題を解決するための最適なソリューションを提案することが求められます。単に製品やサービスを販売するだけでなく、顧客のビジネスを深く理解し、その成長に貢献するための提案力が必要です。そのため、複雑な問題に対して論理的に考え、最適な解決策を導き出すことができる課題解決能力が不可欠です。
新しい技術や市場の動向を常に把握し、それらを顧客の課題解決に結びつけるためには、論理的な思考力と問題解決能力が不可欠です。また、顧客の要望を的確に聞き取り、その本質を理解するヒアリング力も求められます。
クライアントと関わるのが好きな人
セールスエンジニアは、顧客とのコミュニケーションが仕事の中心となります。顧客のニーズを聞き出し、信頼関係を構築し、最終的に契約へと繋げるためには、人と接することが好きな人が向いています。
顧客との関係構築には、コミュニケーション能力だけでなく、共感力や傾聴力も重要です。顧客の立場に立って考え、その言葉の裏にある真意を理解しようと努める姿勢が求められます。また、プレゼンテーション能力も必要で、技術的な内容を分かりやすく説明し、顧客に納得してもらう必要があります。
最新知識を身につけていくのが苦にならない人
IT業界は日々進化しており、新しい技術やサービスが次々と登場します。セールスエンジニアは、常に最新の知識を習得し、顧客に最適なソリューションを提供する必要があります。そのため、新しい技術に興味を持ち、積極的に学習していく姿勢が求められます。
また、技術的な知識だけでなく、業界の動向や競合他社の情報も収集する必要があります。常にアンテナを張り巡らせ、新しい情報を取り入れることができる人が、セールスエンジニアとして成功する可能性が高いです。
柔軟な発想力がある人
顧客の課題は、常に同じではありません。多種多様な顧客に対応するためには、柔軟な発想力が必要となります。既成概念にとらわれず、新しい視点から問題解決に取り組むことができる人が求められます。
また、顧客の要望は、常に変化する可能性があります。その変化に対応するためには、臨機応変に対応できる柔軟な対応力も必要です。
セールスエンジニアに役立つ資格
セールスエンジニアになるために、資格は必須ではありません。とはいえ、自分の能力を証明するために資格は役立ちます。セールスエンジニアに役立つ資格には、以下のようなものがあります。
- 基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
- ITストラテジスト
- Cisco(シスコ)技術者認定試験 CCNA
- ORACLE MASTER(オラクルマスター)
基本情報技術者試験・応用情報技術者試験
基本情報技術者試験も応用情報技術者試験も、独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)が実施する「情報処理技術者試験」のひとつで、それぞれのレベルに応じて網羅的なITの知識を証明する試験です。
基礎情報技術者試験のほうが難易度は低く、IT専門職としての基礎的な能力を問われます。IT業界の経験が少ない人は、基礎情報技術者試験からチャレンジするとよいでしょう。
ITストラテジスト
ITストラテジストは、IPAが実施する国家試験「情報処理技術者試験」のひとつで、経営戦略に基づいて最適なIT戦略を策定・提案・推進する能力を示す資格です。
セールスエンジニアとして、単に製品やサービスを売るだけでなく、顧客のビジネス全体を俯瞰し、最適なITソリューションの提案能力が高いことを示します。
ITストラテジストを取得することにより、ITに関する深い知識だけでなく、経営戦略やビジネスモデルに関する高度な専門性をアピールできます。
ITに詳しくない顧客の経営層に対しても、ITおよび経営の専門家としての信頼感の向上につながるため、とくに大規模なシステム導入やコンサルティング営業に有利に働くでしょう。
Cisco(シスコ)技術者認定試験 CCNA
シスコ技術者認定試験は、ネットワーク機器の大手ベンダーであるシスコシステムズが提供する、ネットワークに関する知識やスキルを証明するための試験です。
シスコの認定試験は、難易度や対象とするネットワーク分野によって、いくつかの種類があります。サーバーエンジニアは、まずはいちばん難易度の低いCCNA(Cisco Certified Network Associate)の取得を目指しましょう。
オラクルマスター(ORACLE MASTER)
オラクルマスターはOracle社が実施する認定資格で、Oracle Database(オラクルデータベース)というデータベースの知識が問われます。いわゆるベンダー資格といわれるものです。オラクルデータベースは企業の基幹システムやWebアプリケーションなど、さまざまなシステムの基盤として利用されています。そのため、社内SEがデータベースの知見を深める際に汎用性が高い資格です。
オラクルマスターには4つのランクがあり、難易度が低い順にBronze(ブロンズ)、Silver(シルバー)、Gold(ゴールド)、Platinum(プラチナ)となっています。
合格することでそれぞれの難易度に応じたオラクルデータベースの管理スキルを証明できるようになります。
まとめ
セールスエンジニアは、エンジニア職の中では少々毛色が違うかもしれません。コツコツと作業をするよりも、社内に出て顧客とコミュニケーションを取ったり、社内の折衝役をするほうが向いている人は、転職といえるでしょう。
自分の適性を見極めて、将来のキャリアパスのひとつにすることで、幅広いキャリア構築が望めます。