短期間で転職を繰り返す人を「ジョブホッパー」といいます。
終身雇用制度が崩壊しつつある日本。転職も珍しいことではなくなってきました。
しかしあまりにも転職回数が多いと、マイナス要素として捉えられてしまいます。実際に、転職回数の多さがネックで再就職に苦戦した経験のある人もいるのではないでしょうか。
この記事ではジョブホッパーの悲惨な末路と、今からでもできるキャリア構築方法について解説します。
ジョブホッパーとは
ジョブホッパーとは、主に転職業界で使用される言葉です。短期間で転職を繰り返す人のことをいいますが、転職のスパンに明確な基準はありません。
日本では「同じ職場で3年勤めたら一人前」という風潮があるため、3年程度勤めて転職をするのであればジョブホッパーには該当しないでしょう。
1年未満での転職を繰り返しているのであれば、ジョブホッパーとみなされる可能性は非常に高くなります。ただし、1社でも3年以上勤めた経験があればジョブホッパーとみなされる可能性は低くなります。
また、新卒採用で入社した会社がどうしても合わずに、すぐ退職した「第二新卒」はジョブホッパーとはみなされず、ポテンシャル採用される可能性が高いです。
年代別の転職回数の目安を以下に示します。この回数以上転職している場合、選考に影響が出る可能性があります。
40代・50代であれば家庭の事情などで転職を余儀なくされた場合も多いため、20代・30代と比較すると転職回数が多いことによる選考への影響は少ないでしょう。
【年代別・選考に影響の出る転職回数の目安】
年代 | 転職回数 |
20代 | 3回以上 |
30代 | 4回以上 |
40代 | 5回以上 |
50代 | 6回以上 |
ジョブホッパーの悲惨な末路
転職を繰り返すと、条件のよい職場に就職しづらくなるだけでなく、人生にさまざまな影響が出ます。
悲惨といわれるジョブホッパーの末路について、最悪の場合を想定して深堀ってみましょう。
あくまでも最悪の場合なので、転職回数が多いからといって必ず悲惨な末路になるわけではないことを頭に入れて読んでください。
仕事を辞めることに抵抗がなくなる
転職を繰り返すと、転職そのものに抵抗がなくなります。
他の人が「辞めたいけどどうしようかな…」と転職に躊躇するような場面でも、転職を選ぶようになるのです。
悪くいえば辞めグセがついた状態となってしまい、結果として転職回数が増えやすくなってしまいます。
スキルや実績が身につきにくい
短期間で転職を繰り返すと、相応のスキルや実績が身につきません。
同業種で転職を繰り返しているのであればスキルの積み重ねもできますが、異業種への転職を繰り返している場合は要注意です。
20代であれば、成長枠として採用してもらえる可能性があるものの、30代後半以降だと転職者にはなんらかのスキルや実績を求める企業が増えます。アピールできるスキルや実績がない場合、転職活動で苦戦する可能性が高いでしょう。
待遇の悪い職場しか雇ってもらえない
ジョブホッパーは企業から敬遠される傾向にあります。そのため、応募者が多い会社だと採用される可能性が低くなり、条件のよい職場で働くことが難しくなってしまいます。
ブラック企業など慢性的な人手不足の会社しか雇ってもらえなくなり、辛い仕事人生になってしまうことも。劣悪な職場環境で仕事が続かずに、さらに転職を繰り返す羽目になるかもしれません。
自己肯定感が下がる
ジョブホッピングを続けていると、メンタルにも悪影響を及ぼします。
転職を繰り返している人は、自分の社会的評価に気付いていることも少なくありません。
仕事が辛くて辞めるのですから、仕事を辞めた直後はホッとした気持ちになりますが、後で冷静に考えると「どうして辞めてしまったんだろう」と後悔することも少なくありません。
履歴書を何枚も書くうちに「どうして仕事が続かないんだ」「自分はダメな人間だ」と自己肯定感が下がってしまいます。
非正規の仕事しか受からなくなる
スキルが乏しい上に転職回数が多いと、正規雇用では採用されにくくなる可能性が高くなります。
雇用には教育コストがかかるため、すぐに辞めるリスクのある人を正規雇用するのは企業としてもリスクがあるためです。
非正規の仕事だと、同じ仕事でも正規雇用よりも給料が少ないことが多く、契約を切られる不安を抱えながら生活しないといけません。
生涯年収が下がる
ブラック企業や非正規の仕事は、給料が低くなりがちです。正規雇用で働き続ける場合と比較して、一生涯で稼げる金額が少なくなってしまいます。
そして負のループへ
過酷な労働や仕事が安定しない不安、給料の安さでストレスが溜まり、耐えられずに退職。そしてまた転職活動…。
「こんなはずじゃなかった」と思いながら負のループから抜け出せなくなってしまうかもしれません。
ジョブホッパーは企業からどう見られるか
日本では終身雇用の発想が根強く、ジョブホッパーを敬遠する企業はいまだに多くあります。
具体的にどのような点で敬遠されるのでしょうか。それぞれ解説します。
根気がない
すぐに仕事を辞める人は根気がないと思われてしまいます。
退職に至った理由はさまざまなので、ジョブホッパーが必ずしも根気がないわけではありません。しかし採用側は履歴書の情報で大部分を判断せざるを得ないため、我慢ができない、根気のない人ではないかと疑念が生じます。
トラブルを起こしそう
ジョブホッパーになる理由でよくあるのがパワハラやいじめなど、人間関係のトラブルです。
自分は悪くなくても、なぜかいつもパワハラやトラブルに巻き込まれる人、いると思います。
周囲の人から見れば退職やむを得なしの状況でも、面接官には伝わりません。
いくらひどい状況だったかをアピールしても、「この人は問題を周囲のせいにするんだな」「トラブルメーカーなんじゃないか」と思われてしまいます。
またすぐ辞めそう
短期間での転職歴が多いと、採用側には「またどうせすぐ辞めるのではないか」と思われます。
採用にはコストと手間がかかるため、すぐ辞めそうな人は採用したくないのが会社の本音です。
そのため、採用を敬遠されてしまうのです。
ジョブホッパーの本当の姿とは
表面的にはネガティブ要素の多いジョブホッパーですが、果たして本当にネガティブ要素ばかりなのでしょうか。
ここではジョブホッパーの本当の姿、強みを解説します。
ガッツがある
以外にもジョブホッパーにはガッツがあります。
転職先を決めて履歴書を作り、面接に行く…転職には大きな労力が必要です。
ジョブホッパーは現状を変えるために何度も転職をしています。つまり何度も大変な労力を割いているということです。
ここぞというときのガッツは、誰にも負けないものがあるのではないでしょうか。
意外と視野が広い
ジョブホッパーはさまざまな職場を経験しているため、視野が広いという長所があります。
ひとつの会社に所属し続けると、どうしても職場の風土に染まってしまいます。
ジョブホッパーは複数の職場風土を肌で経験しているため、自分でも気付かないうちにさまざまな考え方が身についていることも。
自己肯定感の低くなりがちなジョブホッパーですが、経験したことをアピールポイントに変えられれば、より良い仕事人生になるでしょう。
頑張り屋さん
頑張り屋さんとは真逆の印象を持たれやすいですが、ジョブホッパーには頑張り屋さんが多くいます。「真面目すぎる」と言われることが多い人も、案外ジョブホッパーになりやすいものです。
頑張り屋さんのジョブホッパーは、頑張り方が少し不器用で、いっぱいいっぱいになって辞めてしまうというパターンに陥る人も多いのではないでしょうか。
ピッタリ合う職場に巡り合えれば存分に能力を発揮できるのですが、自己分析が不十分で向いていない職種で働いていたり、そもそも正規雇用で働くのが向いていなかったりといった理由で、転職を繰り返す人も中にはいるでしょう。
それでも持ち前の真面目さで「きちんと働かなければ」と新しい職場にチャレンジするのは、頑張りが空回りしていると言わざるを得ません。
なぜジョブホッパーになってしまうのか
ジョブホッパーの中には、自分でも仕事が続かない理由がわからず、悩んでいる人もいると思います。
周囲の人は仕事が続いているのに、自分は仕事が続かずに劣等感に苦しむこともあるのではないでしょうか。
ここでは、なぜジョブホッパーになってしまうのか、理由を説明します。
自分への期待値が高い
ジョブホッパーは自分への期待値が高い人が多いです。
自分への期待値が高いため、失敗をしたときに強いストレスや劣等感を抱き、自分を消耗させてしまいます。
働くことによる精神的な負荷が強く、仕事を続けるのが辛くなり、退職という道を選ぶことになりがちです。
いい意味で自分への期待値を下げることができれば、ジョブホッパーから抜け出せるかもしれません。
職場への期待値が高い
ジョブホッパーは自分への期待値が高いだけでなく、職場への期待値が高い場合もあります。
職場はさまざまな考えの人が集まっているため、どうしても自分の思いとは異なる部分が発生してしまいます。しかし職場への期待値が高いと「新人指導は綿密におこなうべきだ」「社員は平等に扱うべきだ」など、不満の感情が溜まってしまいます。
職場への期待値が高いと受けるストレスも大きくなるため、結果として転職を繰り返すようになります。
「こんなものか」と清濁併せ呑めるようになると、状況が変わるかもしれません。
感受性が強い
感受性が強い人もジョブホッパーになりやすい傾向があります。
感受性が強い人は、多くの人が気にならないことも敏感に察知できます。
仕事においてプラスに働く場面も多いのですが、当の本人は疲れが溜まってしまうため、体調を崩してしまうことも。
仕事の継続が困難となり、ジョブホッパーになるケースも多いかもしれません。
向いていないジャンルの職種にこだわっている
向いていないジャンルの職種にこだわっている場合も、ジョブホッパーになりやすい傾向にあります。
たとえば、感受性が強く周囲の評価が気になる人にとって、ノルマのあるような仕事は向いていないでしょう。しかし、たとえば営業職に憧れていたなど、何らかの理由で営業職にこだわる場合、なかなかうまくいかないかもしれません。
看護師など資格職の場合、資格を取るのにコストや労力がかかっているため、向いていないと思っても「自分にはこれしかない」と思い込みがちです。
その結果、同ジャンルの中で短期間の転職を繰り返してしまいます。
同業種内の転職はジョブホッパーとはみなさないという説もありますが、同業種でも転職スパンが短いと、面接のときに警戒される可能性は高いでしょう。
ジョブホッパーが適職を見つける方法
ジョブホッパーは能力が低いわけではないので、環境が整っていれば、力を存分に活かして働くことができます。
ジョブホッパーが自分に合った仕事を見つける方法を解説します。
自己分析をする
まずは自己分析が必要です。自分の好きなこと・嫌いなこと、自分の得意なこと、苦手なことを徹底的に洗い出します。
そして仕事が続かない原因は何なのかを分析します。
自己分析をした上で、どのような仕事であれば続けられそうかを検討することが重要です。
とはいえ、自分のこととなると客観的に見られない人は多いもの。そのようなときは、友人や家族など、身近な人の意見を聞くとよいでしょう。
職種のジャンルを変えてみる
今まで似たようなジャンルで転職を繰り返している人は、職種のジャンルを変えると上手くいくかもしれません。
慣れないジャンルの仕事に転職するのは勇気がいるため、経験のある分野で転職をするほうが、心理的ハードルが低くなります。
そして何度も同じような理由で転職を繰り返してしまうのです。
思い切って全然違うジャンルの職種に転職すると、上手くいくかもしれませんよ
3年は腰を据えると割り切る
日本では「3年続けると一人前」という風潮が根強くあります。
そのため、どこか1か所でも3年続いた職場があると、面接官の印象が変わります。
3年の我慢と割り切って、在籍し続けるのもひとつの手段です。その後の選択肢が広がります。
正規雇用にこだわらない
体力的な面や、集団に属することが苦手といった理由で、正規雇用が向いていない人もいます。
自覚がある人は、正規雇用ばかりに焦点を当てるのではなく、契約社員やアルバイトの掛け持ち、フリーランスなど働き方を柔軟にチョイスしてみましょう。
ジョブホッパーとキャリアビルダーの違い
ジョブホッパーもキャリアビルダーも、短期間で転職を繰り返す点では同じですが、両者には違いがあります。
キャリアビルダーとは、転職を繰り返すごとにスキルアップしていく人のことをいいます。
基本的に同一業界で、成長できる環境や収入アップを目的として、転職を繰り返すのがキャリアビルダーです。転職理由が前向きかつ一貫性があるため、着々とキャリアを積み重ねることができ、転職のたびに給料がアップする傾向にあります。
ジョブホッパーは転職理由に一貫性がなく、アピールできるスキルも身についていない場合が多いため、転職を繰り返すごとに給料や待遇が悪くなる傾向にあります。
適職を知って豊かな仕事人生を送ろう
日本は欧米と比較して、転職をネガティブに捉える風潮があります。しかし、転職に前向きな理由があれば、必ずしも否定的に捉えられるわけではありません。
大切なのは、継続できる仕事や働き方を見つけ出すことです。思い込みを捨てて客観的に自己分析ができれば、適職にグッと近づくことができます。
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