「ヤメハラ」という言葉をご存じですか?「ヤメハラ」とは、退職の意向を伝えた途端に、いじめや嫌がらせ、過度な引き止め行為をおこなうことをいいます。
なかには「お前はどこにいっても通用しない」など、人格否定を伴った悪質なものもあります。
ヤメハラを受け、転職は裏切り行為のように言われて辛い思いをしている人、転職を思い留まっている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、転職が裏切り行為といわれても気にしなくてよい理由や、裏切り行為と言われたときの対処法、ヤメハラを最小限にする方法などを解説します。
転職に際して悩んでいる方はぜひ読んでください。
転職が裏切り行為といわれる理由
転職が裏切り行為といわれるのは、終身雇用に基づいた考え方が根付いている、嫉妬など、自分に責任のない理由であることがほとんどです。
具体的には以下のような理由が考えられます
- 辞めずに働くのが美徳と考えている
- うらやましいと思っている
- 「育ててやった」という思いが強い
- 仲間意識が強すぎる
それぞれ解説します。
辞めずに働くのが美徳と考えている
終身雇用に基づいて「辞めずに働くことが美徳」と考えている人は、いまだに多くいます。
「ひとつの会社で定年まで働く人が立派」「長く勤めた人のほうが偉い」といった考えが根強い企業風土だと、転職に対してネガティブな反応を示します。
「転職者は根性なし」と、転職する人を裏切り者扱いする傾向にあるのです。
また、辞めずに働くのが美徳といった風潮の会社で働いていると、自分自身も同様の考え方に染まりやすくなるため、転職を考えることに対して罪悪感を抱くケースもあります。
うらやましいと思っている
今の仕事にやりがいを感じていない人は、転職する人に対して「うらやましい」という感情を抱きがちです。その妬みから、転職する人を裏切り者扱いするようになります。
「うらやましいから自分も転職にチャレンジしよう」と前向きになればよいのですが、ネガティブな方向に思考が走ってしまい、他者に不満の矛先が向いてしまうのです。
会社側に「育ててやった」という思いが強い
新卒で入社した社員が退職を切り出したときに「今まで育ててやったのは誰だ?」「恩を忘れるなんて裏切り者だ」といったことを言い、引き止めようとする会社があります。
そういったことを言われると、転職を思いとどまってしまいますよね。
なかには、転職を検討する時点で、「せめてあと〇年会社に貢献してから退職しよう」と、育ててもらった恩義を感じて転職を踏みとどまる人もいるでしょう。
しかし、新人で入社した社員を育てるのは恩義を売るような行為ではありません。なぜなら普通の会社であれば、教育コストを計算した上で新人を採用するからです。
会社側が「育ててやったのに転職するのは裏切り行為だ」と言うようであれば、その会社はブラック体質です。
そのような会社で働き続けるのが、自分の人生にとってよいことなのかを考えたほうがよいでしょう。
仲間意識が強すぎる
仲間意識が強すぎる会社では、転職する人に対して裏切り者扱いすることがあります。小規模の会社でありがちです。
仲間意識の強さは、団結力やチームワークの向上など、よい面もあります。しかし精神的に自立できていない関係性だと「仲間」の枠からはみ出た途端に、対象者に冷たくあたるようになるのです。
本当の仲間であれば、新たな門出を応援したほうがよいのですが、残念ながら転職者を裏切り者として扱うような職場もあります。
裏切り行為といわれても気にしなくてOKな理由
転職は正当な行為なので、裏切り行為といわれても気にする必要はありません。なぜなら転職の自由は憲法で定められており、最近では国も転職を後押ししているからです。
国家を挙げて人口の流動性を確保しようとしているのに、社員を自社に縛り付けるのはナンセンスといえるでしょう。
ここでは、転職を裏切り行為といわれても気にしなくてよい理由を解説します。
職業選択の自由は保証されている
職業選択の自由は、憲法によって保証されています。
日本国憲法第22条第1項
「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択 の自由を有する。」
いくら育ててくれた上司でも、あなたの転職を阻むような言動を取る権利はないのです。
参考:厚生労働省|憲法22条に規定する職業選択の自由について
会社は自分の人生を保証してくれないから
裏切り者といわれ、転職を引き止められようとも、会社は自分の人生を保証してくれません。
裏切り者といわれるからといって、転職を先延ばしにして不本意な結果になったとしても、自己責任となってしまいます。
裏切り者扱いされるのは辛いことですが、働きたくない会社で長い仕事人生を送るのは本末転倒です。
長期視点で自分の人生を考えたときに、自分にとってよい選択を取るようにしましょう。
終身雇用のメリットはなくなりつつある から
高度経済成長期と比較すると、日本の経済成長は低迷しています。どの会社も年功序列で給料が自動的に上がっていくという時代は終わり、長く勤めることのメリットは薄れてきています。
最近では成果主義を重視する企業も増えてきているため、自分のスキルをもって条件のよい会社に転職、ということも珍しくありません。
能力の高い人は、転職をすることで条件のよい環境で働ける可能性が高くなりつつあるため、無理に今の会社に在籍し続ける必要はないのです。
国が転職を後押ししているから
昨今の経済成長の停滞や労働人口の減少を受け、国も転職を後押ししています。
令和5年5月に発表された「三位一体の労働市場改革の指針」では、以下の方針が打ち出されています。
- リスキリングによる能力向上支援
- 個々の企業の実態に応じた職務給(ジョブ型人事※)の導入
- 成長分野への労働移動の円滑化
※ジョブ型人事…特定の業務ができる人材を採用し活用すること。企業側には、即戦力確保のメリットが、雇用される側には自分の能力を活かして条件のよい労働環境で勤務できる、契約した業務以外をする必要がない、などといったメリットがある。
国を挙げて転職を後押ししている今、転職を裏切り行為扱いされてもまったく気にする必要はないのです。
退職を裏切り行為扱いする職場の特徴
退職を裏切り行為扱いする職場には特徴があります。人手不足や古い体質など、余裕がなく変化を嫌う職場では、退職者が出ることが波風となるため、裏切り者扱いする傾向にあります。
ここでは、退職を裏切り行為扱いする職場の特徴を具体的に解説します。
人手不足
転職者を裏切り者扱いする会社は、慢性的な人手不足なことが多いです。
社員が減ると自分の仕事がハードになるため、辞めていく人に不満の矛先を向けるのです。
このような職場は雰囲気が悪いことも多くあるため、「人手不足→働きにくい職場環境→人が辞める→さらに人手不足」の悪循環に陥っているケースも多くあります。
「職場の迷惑も考えないのか」などと言われても、雰囲気を悪くしているのは文句を言ってくる人であることが多く、そもそも人手不足の原因は会社側にあるため、転職する人の責任はありません。
体質が古い
高度経済成長期の考え方が抜けない、体質が古い会社では、転職は裏切り行為扱いされがちです。とくに、高度経済成長期を会社員として過ごしてきた60〜70代が役員の会社では、この傾向が強いでしょう。
トップが転職に対してネガティブだと、会社全体の雰囲気も転職しようとする人に対して当たりが強くなりがちです。
長年培ってきた考えを変えるのは容易ではないため、会社の風潮に合わせようとせず、自分が正しいと思う道を進むようにしましょう。
裏切り者扱いされたときの対処法
転職しても裏切り者扱いされる筋合いはない、とわかっていても、裏切り者扱いされるのは辛いですよね。
退職されて裏切り者扱いされたときの対処法を解説します。辛い気持ちを抱えている方の参考になれば幸いです。
退職までの辛抱と割り切る
退職までの辛抱と割り切ってやり過ごします。辛いですが、もっとも手間のかからない方法です。
ポイントは、必要な業務を淡々とおこなうことです。不当な扱いを受けると真面目に働くのも嫌になりますが、こちらに落ち度があるとトラブルの原因になりかねません。
「立つ鳥後を濁さず」の精神で、退職までの日々をやり過ごしましょう。
有給を使って休む
職場で冷たく当たられる、コミュニケーションに支障があるなど、精神的ダメージが大きい場合は、有給を使って休みましょう。
やりたいことがあって転職をするのに、万全でない状態で転職するのは本末転倒です。
新しい職場に万全のコンディションで飛び込むための、必要な休みです。今自分はどうするのがベストなのか、優先順位を考えて判断するようにしましょう
悪質な場合は外部機関に相談する
無視をされる、業務に必要な連絡事項をされない、不当に給与や賞与を減らされたなどの悪質な対応を受けた場合は、外部機関に相談しましょう。
代表的な相談窓口は、労働基準監督署です。労働基準監督署の調査の結果、法令違反が認められた場合、「是正勧告」という行政指導が職場に入ります。
是正勧告までいかない場合でも、労働基準監督署から調査が入ることにより、職場の体質が変わることもあります。全国の相談窓口は下記リンクをご参照ください。
退職時のトラブルを最小限に抑える方法
退職をする際、できるだけトラブルは避けたいですよね。
ここでは退職時のトラブルを最小限に抑える方法を解説します。
スケジュールに余裕を持って退職する
スケジュールに余裕を持たせ、十分な引き継ぎをおこなってから退職することで、円満退職につなげられます。会社の風土が健全な場合は、この方法で退職トラブルを避けられるケースが多いです。
また、繁忙期の退職は引き継ぎの負担が大きくなるため、可能であれば繁忙期の退職を避けると尚よいでしょう。
退職の報告も繁忙期を避けることも重要です。
当たり障りのない退職理由を伝える
トラブルを避けたいのであれば、退職理由は当たり障りのないものを伝えましょう。
「給料が安いから」「上司と反りが合わないから」などの本音を伝えていけないわけではありません。むしろ正直に伝えるほうが、会社のためになります。
しかし、上司や経営者がワンマン気質の場合、赤裸々に伝えることで不当なトラブルの火種になるリスクが発生することも。
「以前から興味のあった〇〇分野にチャレンジしたい」「体調の都合で業務を続けることが困難となった」など、職場に非のない理由を伝えることで、トラブルを回避できる確率がアップするでしょう。
転職先の自慢や現職の愚痴は言わない
転職することをメンバーに伝えた後は、転職先の自慢や職場の愚痴はNGです。
今まで職場の愚痴を言い合っていた仲でも、辞めていく人から職場の文句を聞くことを快く思わない人もいます。また、転職先の好条件を話してしまうと、嫌味とも取られかねません。
転職することを伝えた後は、当たり障りなく過ごすように心がけましょう。
転職するときの職場内トラブルについてよくある質問
最後に、転職するときの職場内トラブルについてよくある質問について解説します。
転職活動は違法ですか?
企業に在籍しながら他社への転職活動をすることは違法ではありません。
退職は何か月前までに伝えたらよいですか?
民法627条によると、雇用期間に定めのない人は退職日の2週間前までに退職の意向を伝えればよいことになっています。
しかし、現実的には退職の2週間前だと引き継ぎに十分な期間を設けられないことが想定されます。
職種にもよりますが2か月前~3か月前までに退職の意思を伝えるとトラブルを避けられるケースが多いようです。
まとめ
転職が珍しくなくなった現在においても、転職を裏切り者扱いする職場は存在します。裏切り者扱いされるのは辛いですが、やりたくない仕事をし続けるデメリットは非常に大きいため、転職をしたい気持ちがあるのなら、勇気を持って転職することをおすすめします。
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