インフラエンジニアはプログラミングをしないから、プログラミング言語を学ぶ必要はないという声を聞くことがあります。反対に、インフラエンジニアでもプログラミングスキルは必要だという意見もあり、エンジニア内でも意見が分かれることも。

この記事ではインフラエンジニアにはプログラミングが必要だという立場のもと、以下のことを解説します。

  • インフラエンジニアがプログラミングをしない理由
  • インフラエンジニアにプログラミングが必要な理由
  • インフラエンジニアにオススメのプログラミング言語

インフラエンジニアがプログラミングをしない理由

インフラエンジニアがプログラミングをしない理由はいくつか考えられます。

  • 専門性が違うから
  • 組織構造上の問題
  • プログラミングをする時間がない

専門性が違うから

インフラエンジニアと開発エンジニアは、専門とする領域が大きく異なります。

インフラエンジニアは、システムの基盤となるハードウェアやネットワークを設計・構築・運用する専門家です。

一方、開発エンジニアは、ソフトウェアの開発に特化しています。それぞれの専門性が高いため、プログラミングスキルがなくてもインフラエンジニアとして活躍できるケースは少なくありません。

組織構造上の問題

組織によっては、インフラエンジニアと開発エンジニアが明確に役割分担されており、インフラエンジニアがプログラミングを行う機会が少ない場合があります。

また、プログラミングに時間をかけるよりも、インフラの安定稼働を優先する風土が根強い組織も存在します。

プログラミングをする時間がない

インフラエンジニアは、サーバーの監視、トラブルシューティング、セキュリティ対策など、即時対応が求められる業務が多いため、新しいスキルを習得する時間的余裕がないと感じる人も少なくありません。

プログラミングの学習には一定の時間投資が必要であり、それが障壁となっているケースも考えられます。

インフラエンジニアにプログラミングが必要な理由

以前はインフラエンジニアにプログラミングの知識はあまり求められませんでした。しかし、昨今のIT環境の変化からインフラエンジニアにもプログラミングの知識が求められるようになっています。その理由を解説します。

  • クラウド環境の利用率が高まっているから
  • 自動化・効率化を図れるから
  • キャリアアップにつながるから 

クラウド環境の利用率が高まっているから

最近ではコスト削減や運用管理の効率化などにより、オンプレミスが減少し、クラウドへの移行が進んでいます。

クラウド環境では、プログラミングを通じてインフラを自動化・管理することが一般的です。プログラミングスキルがないと、クラウド環境を最大限に活用することができません。

そのため、インフラエンジニアにおいてもプログラミングのスキルが求められるのです。

自動化・効率化を図れるから

プログラミングを活用することで、インフラの構築や運用を自動化し、作業効率を大幅に改善できます。これにより、人的ミスを減らし、システムの安定性を高めることができるでしょう。

設定ファイルの作成、コマンドの作成と実行、複数サーバーへのファイルコピーなど、定型作業に対して簡易なプログラムを作ることで作業効率向上が見込めます。

キャリアアップにつながるから

プログラミングスキルを習得することで、インフラエンジニアとしてのキャリアアップが期待できます。

DevOps(デブオプス)という言葉をご存じでしょうか。DevOpsとは、Development(開発)という単語と、Operations(運用)という単語を かけ合わせた言葉で、 DevOpsエンジニアはその名の通り、開発だけでなくインフラの構築や運用をおこなったり開発チームとインフラチームの間に立ち橋渡し役をおこなったりと、マルチな活躍が求められます。

ITエンジニアは慢性的な人手不足です。インフラエンジニアとして培った知見をもとにプログラミング言語による開発ができるようになることで、市場価値の高いエンジニアとなれるでしょう。

インフラエンジニアにオススメのプログラミング言語 

インフラエンジニアにオススメのプログラミング言語を紹介します。

  • Shell
  • Python
  • PowerShell
  • Ruby
  • Java

Shell

Shellは、コンピュータのOS(オペレーティングシステム)に命令を伝えるためのスクリプト言語の一種です。

とくに、Unix系OS(Linux、macOSなど)で広く利用されており、複数のOSコマンドを組み合わせることで、複雑な処理を自動化することができます。

Python

Pythonはシステム開発によく使われる言語ですが、実はインフラでも使用する機会もあります。とくにサーバーの自動化などで使用される機械が多いです。

障害対応のログ調査のデータ解析に使用されることもあるため、インフラエンジニアにオススメできる言語です。

シンプルで読みやすい文法が特徴のPythonは、フルスタックエンジニアを目指すためにも覚えておいて損はないでしょう。

PowerShell

Windows環境に標準搭載されているPowerShellは、Windows Serverの管理や自動化に非常に便利です。

インフラエンジニアとしては覚えておきたいスクリプト言語のひとつといえるでしょう。

Ruby

Rubyもインフラエンジニアにオススメの言語です。

Rubyはインフラシステムの自動化に使用するソフトウェアに採用されることがある言語で、インフラ開発でも使用されています。アプリケーション開発にも使用されるため、フルスタックエンジニアや業種転換を目指す人は積極的に習得しましょう。

Java

Javaは、長年にわたり人気のあるプログラミング言語のひとつです。多くの企業で採用されており、Webアプリケーションから大規模なシステムまで、幅広い分野で利用されています。

信頼性もあり、言語としての適応範囲も多いので、インフラエンジニアにかかわらずオススメの言語です。

インフラエンジニアの仕事内容

インフラエンジニアは、ITシステムの基盤となる部分を設計、構築、運用する専門家です。企業のITシステムが円滑に稼働するために欠かせない存在と言えるでしょう。以下に、各分類ごとに具体的な仕事内容を詳しく解説します。

  • サーバー管理
  • ネットワーク構築
  • セキュリティ対策
  • クラウド環境の構築
  • インフラの運用・保守

サーバー管理

サーバーは、ITシステムの中心となるコンピュータです。インフラエンジニアは、このサーバーを管理する業務を行います。

サーバー管理の具体的な業務内容
  • サーバーの設置・設定:新しいサーバーを導入する際に、ハードウェアの設置やOSのインストール、各種設定をおこなう
  • サーバーの監視:サーバーの稼働状況を常に監視し、異常が発生した場合には迅速に対応する
  • サーバーのチューニング:サーバーのパフォーマンスを最適化するために、各種設定を調整する
  • 仮想化技術の活用:複数の仮想マシンを1つの物理サーバー上で稼働させる仮想化技術を活用し、サーバー資源を効率的に利用する

ネットワーク構築

ネットワークは、複数のコンピュータを接続し、データのやり取りを可能にする仕組みです。インフラエンジニアは、このネットワークを設計・構築します。

ネットワーク構築の具体的な業務内容
  • ネットワーク設計:ネットワークの規模や利用目的、セキュリティ要件などを考慮し、最適なネットワーク設計をおこなう
  • ルーティング設定:ネットワーク上のデータの経路を決定するルーティングの設定をおこなう
  • スイッチング設定:ネットワーク内のデータ転送を制御するスイッチングの設定をおこなう
  • VPN設定:異なるネットワーク間を安全に接続するためのVPN (Virtual Private Network) の設定をおこなう

セキュリティ対策

セキュリティ対策はインフラエンジニアの重要な役割です。情報漏洩や不正アクセスを防ぐために、セキュリティ対策をおこないます。

セキュリティ対策の具体的な業務内容
  • ファイアウォールの設定:外部からの不正アクセスを防ぐために、ファイアウォールを設定する
  • 侵入検知システムの導入:ネットワークへの侵入を試みる攻撃を検知するシステムを導入する
  • 脆弱性診断:システムの脆弱性を洗い出し、必要な対策をおこなう
  • アクセス制御:権限のないユーザーによるシステムへのアクセスを防ぐためのアクセス制御をおこなう

クラウド環境の構築

近年では、クラウドコンピューティングの利用が急速に広がっています。インフラエンジニアは、AWS、Azure、GCPなどのクラウドプラットフォーム上で、仮想マシンやストレージ、ネットワークなどを構築します。

クラウド環境構築の具体的な業務内容
  • IaaS (Infrastructure as a Service):仮想マシンやストレージなどのコンピューティング資源を、インターネット経由で利用できるサービスを構築する
  • PaaS (Platform as a Service): アプリケーション開発に必要なプラットフォームを、クラウド上で提供するサービスを構築する
  • SaaS (Software as a Service):クラウド上で提供されるソフトウェアを、インターネット経由で利用するサービスを導入する

インフラの運用・保守

インフラは、一度構築すれば終わりではなく、常に運用・保守が必要です。

  • パフォーマンス監視:システムのパフォーマンスを監視し、ボトルネックとなる箇所を特定する
  • パッチ適用:OSやアプリケーションの脆弱性を修正するためのパッチを適用する
  • バックアップ:データの損失に備えて、定期的にバックアップをおこなう
  • 障害対応:システム障害が発生した場合には、原因を特定し、迅速に復旧させる

インフラエンジニアと開発エンジニアの違い

インフラエンジニアは、システムの基盤を構築し、開発エンジニアが開発したソフトウェアが円滑に動作するための環境を提供します。開発エンジニアは、ユーザーが利用するアプリケーションやシステムを開発します。

【インフラエンジニアと開発エンジニアの違い】

インフラエンジニア開発エンジニア
主な仕事内容ITシステムの基盤構築ソフトウェア開発
対象とするものサーバー、ネットワーク、ストレージなどアプリケーション、システム
求められるスキルハードウェア、OS、ネットワーク、セキュリティ、クラウドなどプログラミング、アルゴリズム、データベース、フレームワークなど
役割
システムの安定稼働、パフォーマンス最適化、セキュリティ確保
ユーザーの要求を満たすソフトウェアの開発
特徴インフラエンジニア開発エンジニア
主な仕事内容ITシステムの基盤構築ソフトウェア開発
対象とするものサーバー、ネットワーク、ストレージなどアプリケーション、システム
求められるスキルハードウェア、OS、ネットワーク、セキュリティ、クラウドなどプログラミング、アルゴリズム、データベース、フレームワークなど
役割システムの安定稼働、パフォーマンス最適化、セキュリティ確保ユーザーの要求を満たすソフトウェアの開発

まとめ

インフラエンジニアを取り巻く環境は変化し続けています。これからはクラウドの知識を持って、マルチに活躍できるインフラエンジニアが重宝されるでしょう。

視野を広く持ってプログラミング言語の勉強をすることは、エンジニアとしてのキャリアを左右するといっても過言ではありません。インフラエンジニアの皆様は、ただでさえ忙しい毎日を送っていることと思います。自分のペースでプログラミング言語のスキルを身につけていってもらえたら幸いです。