プロジェクトマネージャーはエンジニアのキャリアパスとして人気があります。とくにマネジメント系に進みたい人にとってはメジャーなキャリアパスです。
この記事では、プロジェクトマネージャーになる方法や必要なスキル、おすすめの資格などを解説します。
プロジェクトマネージャーとは
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの企画から実行、完了までの全工程を統括し、プロジェクトの目標である品質、納期、コスト(QCD)を達成するための責任を負います。
いわば、プロジェクトを成功させるための指揮官であり、チームメンバーをまとめ、プロジェクトを円滑に進めるための戦略を立て、実行します。
プロジェクトマネージャーの仕事内容
プロジェクトマネージャーの仕事は多岐にわたりますが、主な仕事内容としては以下のものが挙げられます。
- プロジェクト計画の策定:プロジェクトの目標、範囲、スケジュール、予算などを明確にする計画書を作成する
- チーム編成:プロジェクトに必要なスキルを持ったメンバーを適切に配置し、チームを編成する
- 進捗管理:プロジェクトの進捗状況を定期的に確認し、遅延や課題が発生した場合には適切な対策を講じる
- リスク管理:プロジェクト遂行中に発生する可能性のあるリスクを洗い出し、対策を立てる
- コミュニケーション:チームメンバー、顧客、関係者とのコミュニケーションを密に行い、情報共有や課題解決を図る
- 品質管理:プロジェクトの成果物が品質基準を満たしているか確認する
プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーの違い
プロジェクトマネージャーとプロジェクトリーダーは、どちらもプロジェクトに関わる重要な役割ですが、その責任範囲や求められるスキルが異なります。
- プロジェクトリーダー:プロジェクトの現場でチームメンバーを指導し、具体的な作業を遂行する
- プロジェクトマネージャー:プロジェクト全体を俯瞰し、戦略的な視点からプロジェクトを管理する
つまり、プロジェクトリーダーは「現場監督」のような役割で、プロジェクトマネージャーは「指揮官」のような役割といえるでしょう。
プロジェクトマネージャーになる方法
プロジェクトマネージャーになるためには、様々な経験やスキルが求められます。以下に、プロジェクトマネージャーになるためのステップを3つ紹介します。
エンジニアとして開発経験を積む
プロジェクトマネージャーになるためには、開発現場での経験が不可欠です。
システム開発の経験がない状態でエンジニアのマネジメントをするのは、車を運転したことがないのにいきなり路上で運転するようなものです。下流工程から上流工程までひと通りの開発工程を経験することが望ましいでしょう。
上流工程まで経験するとなると、短く見積もっても、3年以上は現場での経験が必要です。
プロジェクトマネージャーの多くがエンジニアとしてキャリアをスタートさせています。エンジニアとして開発経験を積むことで、プロジェクトの進め方や技術的な知識を身につけることが、プロジェクトマネージャーへの第一歩です。
プロジェクトリーダーの経験をする
エンジニアとしての経験を積んだ後は、プロジェクトマネージャーの下位ポジションであるプロジェクトリーダーになり、マネジメント経験を積みます。
プロジェクトリーダーは現場の責任者です。品質のチェックやタスクの進行管理など、業務単位で順調に遂行するように管理します。
プロジェクトリーダーの業務を通して、マネジメントスキルや人間関係構築能力、問題解決能力を養いましょう。
プロジェクトマネージャーに応募する
開発エンジニアやプロジェクトリーダーとして実務経験を積んだら、プロジェクトマネージャーの求人に積極的に応募しましょう。IT業界は経験を評価します。今まで積んできた経験をアピールすることが重要です。
プロジェクトリーダーとしての活躍を見込まれて、プロジェクトマネージャーに引き上げられるケースもあります。
プロジェクトマネージャーに必要なスキル
プロジェクトマネージャー(PM)は、プロジェクトの成功に不可欠な存在です。多岐にわたる業務を円滑に進めるためには、様々なスキルが求められます。
管理能力
プロジェクトマネージャーにもっとも必要なのはプロジェクトの管理能力です。納期に間に合うように逆算してスケジュールを組んだり、予想されるリスクを洗い出して事前に対策したり、といった能力が求められます。
- スケジュール管理:プロジェクトの開始から終了までのスケジュールを策定し、進捗を管理する ガントチャートやPERTチャートなどを活用し、各タスクの納期を明確にし、遅延を防ぐ
- 予算管理:プロジェクトにかかる費用を計画し、予算内で収まるよう管理する コスト削減策を検討したり、予期せぬコスト増加に対応したりするスキルも必要
- 品質管理:プロジェクトの成果物が要求仕様を満たしているか確認し、品質を確保する 品質基準を設定し、定期的なフィードバックを実施することが重要
- リスク管理:プロジェクト遂行中に発生する可能性のあるリスクを事前に洗い出し、対策を講じる リスクアセスメントを行い、リスク発生時の対応計画を立てておくことで、プロジェクトの失敗を未然に防ぐ
開発に関する専門知識
プロジェクトマネージャーは開発作業に携わることはほとんどありません。しかし、開発に関する専門知識があることで、スケジュール感やリスク管理、問題解決の解像度が上がります。
- 要件定義:クライアントのニーズを理解し、限られたリソースで実装可能かを検証し、組み立てる
- 開発プロセス:ウォーターフォール型、アジャイル型など、様々な開発プロセスを理解し、プロジェクトに適した手法を選択する
- 業界知識:担当するプロジェクトの業界に関する知識を習得することで、より深いレベルでプロジェクトに関われる
問題解決能力
プロジェクトを進める上で、様々な問題が発生します。プロジェクトマネージャーは、これらの問題を迅速かつ適切に解決する能力が求められます。
- 問題分析:発生した問題の原因を分析し、根本的な解決策を導き出す能力
- 代替案の検討:問題解決のために複数の代替案を検討し、最適な解決策を選択する能力
- 決断力:迅速かつ的確な判断を下し、プロジェクトを前に進める能力
リーダーシップ
プロジェクトマネージャーは、チームをまとめ、目標達成に向けて導くリーダーシップを発揮する必要があります。
- チームビルディング:チームメンバーの能力を最大限に引き出し、一体感を醸成する能力
- 目標設定:チーム全体で達成すべき目標を明確にし、メンバーのモチベーションを高める能力
- コーチング:チームメンバーの成長を支援し、能力開発を行う能力
コミュニケーションスキル
プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの成功のために、様々な関係者と円滑なコミュニケーションを築くことが求められます。
- 聞く力:相手の意見に耳を傾け、正確に理解する能力
- 伝える力:自分の考えや情報を、相手が理解できるようにわかりやすく伝える能力
- 交渉力:関係者との間で合意形成を図り、プロジェクトを円滑に進める能力 顧客や上司、チームメンバーなどそれぞれの立場を考慮した上での折衝能力が必要
プロジェクトマネージャーの年収
経済産業省の調査によれば、プロジェクトマネージャーの平均年収は「891.5万円」となっています。IT系職種のなかでも高水準の年収のため、開発エンジニアのキャリアアップとしても大変魅力的です。
プロジェクトマネージャーに向いている人の特徴
プロジェクトマネージャーに向いている人の特徴を解説します。
ヒアリングスキルがある人
プロジェクトマネージャーは、様々なステークホルダー(顧客、開発チーム、経営層など)とのコミュニケーションが不可欠です。ニーズや要求を正確に把握し、プロジェクトに反映させるためには、高いヒアリングスキルが求められます。
コミュニケーションスキルがある人
プロジェクトを成功させるためには、チームメンバーだけでなく、様々な関係者との円滑なコミュニケーションが不可欠です。
いくら自分の考えが正しくても、正論を押し付けるだけではチーム運営は円滑に進みません。各関係者の理解レベルや立場、性格などを考慮し、立ち回れる人はプロジェクトマネージャーに向いているでしょう。
決断力がある人
プロジェクトを進める上では、常に様々な判断を迫られます。迅速かつ的確な判断を下す能力は、プロジェクトマネージャーにとって不可欠です。
ときにはリスクを取った判断を迫られることもあるでしょう。そのようなときに、結果に対する説明をできる責任感も求められます。
プロジェクトマネージャーにおすすめの資格
プロジェクトマネージャーとしてキャリアを築きたい方にとって、資格取得は非常に有効な手段です。ここでは、プロジェクトマネージャーにおすすめの代表的な資格3つについて解説します。
資格名 | 主催機関 | 特徴 |
プロジェクトマネージャ試験 | IPA | 日本のIT業界で広く認知されている国内のプロジェクトマネジメントの標準的なスキルを証明 |
PMP | PMI | 世界中で最も有名な資格グローバルなプロジェクトマネジメントの知識と経験を証明 |
P2M | IPA | プログラムマネジメントとプロジェクトマネジメントの両方を統合的に扱う能力を証明 |
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が実施する、国内で最も一般的なプロジェクトマネジメント資格です。
プロジェクトマネージャー試験に合格することで、日本のIT業界におけるプロジェクトマネジメントの標準的なスキルを証明することができます。情報処理技術者試験の一種であり、システム開発プロジェクトの成功に向けて進行管理を担う人材を対象としています。
参考:独立行政法人 情報処理推進機構|プロジェクトマネージャ試験
PMP(Project Management Professional)
PMPは、PMI(Project Management Institute)が提供する、国際的なプロジェクトマネジメント資格です。
PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系ガイド)に基づいた幅広い知識と経験が求められます。グローバルなプロジェクトに関わる場合や、国際的な企業で働く場合に特に有利な資格です。
大規模プロジェクトの管理に携わる人や、海外でのプロジェクトに関わる人におすすめです。
P2M
PM2は、経済産業省が策定し、日本プロジェクトマネジメント協会が実施する、プログラムマネジメントとプロジェクトマネジメントの両方を統合的に扱えることを証明する資格です。モノづくりの国日本ならではの資格といえるでしょう。
複数のプロジェクトを連携させ、より大きな目標を達成するための能力を評価されます。大規模なシステム開発や、複数のプロジェクトを同時進行するような場合に役立ちます。
中小企業やベンチャー企業のプロジェクトマネージャーにおすすめです。
参考:特定非営利活動法人 日本プロジェクトマネジメント協会|PM2とは何か
プロジェクトマネージャーについてよくある質問
最後に、プロジェクトマネージャーについてよくある質問をまとめました。
未経験でもプロジェクトマネージャーになれますか?
結論からいうと、IT未経験からいきなりプロジェクトマネージャーになれる、といった求人もあるかもしれません。しかし、採用されたもののITの知見がない状態では、求められる能力を提供することは難しいでしょう。他業種でマネジメント業務経験があっても専門知識が足りないからです。
まずは開発エンジニアとしての実践を積むほうがベターでしょう。
20代でもプロジェクトマネージャーになれますか?
20代でもプロジェクトマネージャーになることは可能です。プロジェクトの規模が大きい場合や大企業よりも、スタートアップ企業などのほうがチャンスは多いでしょう。
フリーランスでもプロジェクトマネージャーになれますか?
フリーランスとして案件ごとにプロジェクトマネージャーとして携わる雇用形態は拡大しています。
IT人材は慢性的に不足しています。流動的なIT人材の活用傾向は、今後も加速するでしょう。
まとめ
プロジェクトマネージャーは、全体を俯瞰してプロジェクトが滞りなく進むように采配しなくてはなりません。開発の知識はもちろんのこと、コミュニケーション能力や決断力など、人としての資質が問われる場面もあります。
決して楽ではない仕事ですが、人と関わることが好きなエンジニアや、組織に貢献することが好きなエンジニアには天職といえるでしょう。興味のある人は、ぜひ目指してみてはいかがですか。