「また土曜日出勤…」「これで14日連続出勤だよ…」「…これっておかしくない?」

この記事を読んでいる人の多くは、休日出勤が当たり前なのはおかしいと思っているのではないでしょうか。そしておそらく、周囲の人が休日出勤を当たり前と思っているため、自分の感覚がおかしいのではないかと悩んでいることと思います。

その感覚は間違っていません。「休む日」と書いて休日です。働くのが当たり前なら、もはや休日ではありません。

この記事では休日出勤が当たり前になることの弊害や休日出勤を回避する方法など、休日出勤で疲弊している人に役立つ内容について解説します。ぜひ最後まで読んでください。

休日出勤が当たり前なのはおかしい!

まず、休日出勤が当たり前なのがおかしい理由について解説します。

月に1回以上休日出勤している人は15%未満

ベースメントアップス株式会社が社会人154名を対象に、休日出勤について調査した結果によると、年に10回以上休日出勤している人の割合は15%でした。

休日出勤の経験割合グラフ

引用:PR TIMES|休日出勤をしたことがある人は全体の54%!?年に10回以上、休日出勤しなければいけない人は15%!会社からの休日出勤の指示は断ることはできないのか!?

月1回以上の休日出勤をしているのであれば、年間12日以上は休日出勤をしているため、その割合は15%未満であると考えられます。

休日出勤の経験者は半数以上ですが、休日出勤が「当たり前」の人は少数です。

休日出勤は時代に逆行している

2019年に働き方改革関連法が施行されて、「働き方改革」という言葉はすっかり世の中に浸透するようになりました。

働き方改革では、長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現に重きを置いています。

項目概要法的根拠
年次有給休暇の取得義務年間10日以上の有給休暇を付与されている者に対して年間5日以上の有給休を取得させなかった場合、懲役6か月または30万円以下の罰則が科されるe-Gov法令検索|労働基準法※第32条
時間外労働の上限設定に伴う罰則規定月45時間、年間360時間までを原則上限とし、労使合意なく超えた場合は懲役6か月または30万円以下の罰則が科されるe-Gov法令検索|労働基準法※第119条、第120条

上記項目などが労働基準法で定められ、国を挙げて長時間労働の是正に取り組んでいる状況です。そのような中で休日出勤が当たり前の職場は、時代や社会の風潮に逆行しているといえます。

休日出勤が当たり前の会社で働くリスク

休日出勤が当たり前になっている状態は、働きすぎです。当然リスクもあります。

ここでは休日出勤が当たり前の会社で働くリスクを解説します。

心身不調になりやすい

長時間労働は心身を蝕みます。身体と心は相互に関連し合うため、休日出勤が常態化している人は心身両方の不調を自覚している人も少なくありません。

過重労働による疾患例
  • 腰痛
  • 月経不順
  • 慢性頭痛
  • 胃潰瘍
  • うつ病
  • 適応障害
  • 脳卒中
  • 心筋梗塞 など

脳卒中や心筋梗塞は命のリスクがある恐ろしい病気です。月経不順や頭痛など「不調だけど仕事はできる」症状も、放置しておくと重大な病気につながるリスクがあります。

また、猛烈に仕事スイッチが入っているとき、いわゆるゾーンに入っている場合、心の不調に気づきにくいことがあります。なんとなく体調が悪いけど勢いで長時間労働を続けた場合、あとになって大きな心の不調が出ることも。

長時間労働は健康リスクの温床なのです。

参考:厚生労働省|過重労働による健康障害を防ぐために(パンフレット)

仕事の効率が低下する

疲労が蓄積すると集中力が低下し、仕事の効率が低下します。

同じ仕事をするのに時間がかかったり、仕事のミスが増えたりと非効率になってしまい、そのために休日出勤をしなくてはならない悪循環に陥ります。

また仕事に精彩を欠くことで、上司や同僚との関係が悪化することも。コミュニケーションがうまくいかなくなり、仕事に支障が出るリスクもあるのです。

家族や親しい人との時間が取れない

休日出勤をするほど忙しい職場であれば、平日も残業が常態化しているでしょう。

平日も休日も仕事で忙しい日々が続けば、家族や恋人、友人など親しい人との時間が取れなくなります。

休日出勤による身近な人との関係悪化例
  • 子どもと過ごす時間が少なく、もはや自分は他人状態で家庭崩壊
  • 配偶者への負担が増大し、離婚寸前
  • 恋人とすれ違いが続き、別れ話へ発展

上記のような状態となってしまい、悲惨な人生となってしまうリスクもあるのです。大切な人のために仕事を頑張ってきたのに、大切な人との関係が悪化するのはあまりにも悲しすぎます。

休日出勤が当たり前な企業の特徴

休日出勤が当たり前な企業の特徴は以下のようなものがあります。

  • 考え方が古い
  • とにかく忙しい
  • 業務上やむを得ない

それぞれ解説します。

長時間労働を評価する風潮がある

あなたの職場に下記のような風潮はありませんか?

休日出勤を誘発しやすい企業の風潮
  • 自分の時間を犠牲にして会社に貢献する人はやる気がある
  • 休日出勤してまで仕事をする人は社会人の鏡だ
  • 定時退社はやる気がない、社会人としてなっていない
  • サービス残業は当たり前

ひと昔前の根性論がまかりとおっている会社では、長時間労働が評価されやすい傾向にあります。残業や休日出勤は誰の目からみてもすぐにわかるため、評価基準として安直に採用されやすいのです。

逆に業務効率化はぱっと見てわかりにくく、長時間労働を評価する職場では評価されにくいことも。

最近では人件費削減の観点からも時間内に業務を終わらせるほうが優秀だとする企業も増えていますが、古い体質の企業だと、いまだに長時間労働が評価されてしまうのです。

人手が足りていない

人手不足による過重労働は、多くの職場で問題となっています。

人手の割に業務量が多いと、残業や休日出勤をしないと仕事が終わりません。労働人口の減少やサービスの多様化で多くの業界で人手不足が問題となっており、人材確保に苦慮している会社は多くあります。なかには人件費軽減のために、少ない人数で仕事を回そうとしている会社もあるでしょう。

スタートアップ企業など受注が安定していない場合、仕事量にムラがあるため、常時ゆとりのある人材を雇用できず、大量受注が発生したときに残業や休日出勤が避けられないこともあります。

業務上回避できない

コンサルタントやエンジニアなど、顧客の都合に左右される仕事は、どうしても休日出勤が避けられない場合があります。

たとえば年末年始にECサイトのシステムにトラブルが発生した場合、「年始休みが終わってから対処します」では顧客に多大なる損害が発生してしまうため、そのような対応はできません。

業務上、休日対応を求められる職種の場合は、休日出勤を完全に回避するのは難しいでしょう。

労働基準法における休日出勤の対応

労働基準法では休日出勤についてどのように定められているのでしょうか。

法律を知っておくことは自分の身を守ることになります。少し難しい部分もあるかもしれませんが、読んでみてください。

代休を取らせる

休日出勤をした場合、後日別の日に取る休みを「代休」といいます。代休を取得した場合、時間分の給与は支払われませんが、時間あたりの割増賃金だけは支払われます。

たとえば時給換算1,000円で働いている人が法定休日出勤後に代休を取った場合は以下のとおりになります。

時給1,000円、1日8時間働く人が法定休日出勤後に代休を取得した場合

時間給       1,000円×8=8,000円 ←支払われない

法定休日割増賃金35%  350円×8=2,800円 ←支払われる

よって2,800円が手当てとして支払われることになります。

割増賃金については次の項目で解説します。

別日に休日を与える制度で「振替休日」あり、代休と混同されがちです。振替休日は、あらかじめ休日を労働日に変更する場合に、勤務日に設定する休日です。振替休日は割増賃金を支払う必要はありません。

割増賃金を払う

休日に出勤した場合、振替休日扱いでない場合は代休取得の有無にかかわらず割増賃金が支払われます。

割増賃金の割増率は、勤務した日が法定休日か所定休日かで変わってきます。

法定休日とは労働基準法代35条でで取得が義務付けられている休日のことです。1週間に少なくとも1回(例外として4週間を通じて4日異常)の休日が義務付けられており、カレンダー通りの会社であれば日曜日を法定休日としているケースが多いでしょう。

法定休日に出勤した場合、35%の割増賃金が支払われます。これは、パート労働者も同様です。

所定休日(法定外休日)とは、法定休日以外の休日をいいます。労働基準法で定められた休日ではないため、法律上は休日労働にはあたらず、通常の時間外労働に対する割増賃金である25%が支払われます。

法定外休日に割増賃金が支払われるのは週40時間を超えた部分だけなので、パートタイマー労働者など、もともと週に40時間未満しか働かない人は、割増賃金の対象外となることもあります。

複雑なので理解が難しいですが、おさえておきましょう。

参考:厚生労働省|労働基準法

前提として36協定が締結されている

そもそも前提として、時間外労働には労使間の36協定の締結が必要です。

36協定とは、労働基準法第36条に基づいて、時間外労働に関する条件を労使間で締結することです。時間外労働をおこなう業務の種類や時間外労働の上限時間など、むやみやたらに時間外労働をさせられないように事前に条件を決めます。

36協定の締結がない状態で時間外労働をさせるのは違法です。

参考:厚生労働省|36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき時候に関する指針

休日出勤を回避する方法

休日出勤が当たり前になっていて疲労の限界という人も多いのではないでしょうか。

ここでは休日出勤を回避する方法を解説します。ぜひ参考にしてください。

業務効率化を図る

業務量が多くて休日出勤が常態化しているのであれば、業務効率化を図ることで改善するケースがあります。

業務効率化の例
  • 業務をタスク化して優先順位をつける(Google Keepなどのタスクツールを活用)
  • 時間を区切って集中力をあげる
  • 省略・自動化できる業務は積極的に省力化する

上記を心がけるだけで業務効率化を図ることができます。

割り切って断る

2つ目に紹介する方法は「割り切って断る」です。簡単に断れれば苦労はしないでしょうが、無理をして健康を害するよりは断るほうが賢明です。

断るときには、明確に理由を伝えます。「疲れで集中力が下がっており、ミスにつながるおそれがある」など、休日出勤を続けることでの会社へのデメリットを伝えるとよいでしょう。

難しいかもしれませんが、シンプルに割り切って断ることも重要です。

上司に相談する

相談できそうな上司がいれば、上司に今の辛い状況を相談しましょう。上司を通じて解決方向に動く可能性があります。

なかには「こんなことも耐えられないなんて社会人失格だ!」などと言ってくる人もいるので、相談相手は慎重に選びましょう。

転職を検討する

休日出勤について改善の見込みがなく、これ以上職場に居続けるのが難しいのであれば、転職するのがもっとも手っ取り早い解決方法です。

会社の体制はなかなか変わりません。休日出勤がマストな業種であれば、なおさら状況は変わりにくいでしょう。

すぐに転職をしない場合でも、外の世界にアンテナを貼ることは重要です。

休日出勤についてよくある質問

最後に、休日出勤についてよくある質問について解説します。

休日出勤してもお金が出ないのはなぜですか?

社内行事など、あらかじめ振替休日が定められている場合は休日出勤しても割増賃金は発生しません。

また、週に40時間未満の場合は、所定休日に出勤しても時間外労働手当は発生しないので「お金がもらえなかった」と感じることもあります。

労働基準法における管理職の定義とはどのようなものですか?

まとめ

「24時間戦えますか」という言葉が流行語大賞にランクインしたのはバブル経済期の1989年。当時若手だった人たちは現在も社会で活躍中なので、会社によっては休日出勤を美徳とする風潮が残っていることもあります。

しかし時代は移り変わります。働き方改革やワークライフバランスが推奨される今の世の中、きちんと休むことの重要性が社会的にも重要視されているのです。

終身雇用の概念が薄れ、仕事は選べる時代になりました。仕事の満一歩足度は人生の満足度にも大きくかかわります。より良い人生を送るために、まずは一歩行動してみましょう。