女性の社会進出に伴い、結婚や出産を機に仕事を辞める人は減りました。だからといって共働きで子育てをするのに優しい環境が整っているとはいえず、現実は個々の努力によって毎日を乗り切っている状況です。

とくに共働きで正社員を続けている夫婦にとって、仕事と育児の両立は非常に大変です。大きなストレスを抱えながら、どうにか毎日をこなしている人も多いのではないでしょうか。

この記事では共働き正社員夫婦が「無理ゲー」状態になってしまう理由や仕事と子育てを両立する方法を解説します。共働きで毎日の生活に疲れた人や、これから共働き正社員で育児を考えている人は、ぜひ読んでみてください。

共働き正社員が無理ゲーになってしまう理由

共働き正社員はとにかく忙しいです。地元から離れた場所で暮らしている場合は、身内の援助も得にくく、実質夫婦2人で乗り切らなくてはいけません。

そんな毎日を送っていれば「無理ゲー」と思うのも無理はないでしょう。ここでは、共働き正社員が無理ゲー状態になってしまう理由を解説します。

  • とにかく時間がない
  • 子どもを保育園に預けられる時間が短い
  • 夫婦間で家事スキルに格差がある
  • 夫婦のどちらかが負担を強いられている
  • 余裕がなくなってギスギスしてしまう
  • もしかしたら理想が高いのかも

とにかく時間がない

共働き正社員夫婦はとにかく時間がありません。

1日8時間労働、残業がないとしても、会社に9時間拘束され、通勤時間は別にかかります。正社員であれば残業がまったくない職場は少ないので、実質はもっと長い時間を仕事に費やすことになります。

朝バタバタと自分と子どもの準備をして、保育園に送り届けて職場へ、退勤したら保育園に迎えに行って家事と子どもの世話…

自分がどうやって生活しているかも分からないぐらい、とにかく時間がないのが共働き正社員夫婦の日常です。そのような毎日が続けば「もう無理!」と思うのも自然なことでしょう。

子どもを保育園に預けられる時間が短い

認可保育園の多くは朝7時から18時ごろまでで、延長保育を利用しても19時半には預かりを終了する園がほとんどです。

共働き正社員夫婦だと、残業や会議などで仕事が長引いた場合、延長保育終了までにお迎えが難しいこともしばしば。お迎えのために職場を離れ、子どもを職場に連れてきてまた仕事、というケースもあるのではないでしょうか。

「保育園の終了が早い」問題は、共働き正社員夫婦の悩みのタネとなります。

夫婦間で家事スキルに格差がある

夫婦間で家事スキルに格差がある場合、家事を得意とする側に負担がかかってしまいます。

慣れない家事を一生懸命やっても、パートナーからダメ出しをされて傷ついた、という話も聞きます。ただでさえ忙しい中、不得手な家事をするよりも、得意な側が家事をササっと済ませたほうが効率がいいのは事実です。

本来であれば苦手な中で家事にチャレンジすることにねぎらいの言葉をかけたいところですが、余裕がなくてついイライラ、家事も自分で抱えてしまうという、誰もが幸せにならない状態におちいってしまいます。

夫婦のどちらかが負担を強いられている

夫婦のどちらかが、家庭での負担が大きい場合、負担を強いられている側に無理がきてしまいます。

ひと昔前までは「家事は女がするもの」と女性がいわゆるワンオペ状態になることが多くありました。その傾向は大きく変わっていませんが、最近は女性の社会進出に伴い、男性の方が負担を強いられるケースも珍しくありません。

最近では性別による役割分担は改善されつつあるものの、残念ながら家庭労働の不平等は一部で根強くみられます。

余裕がなくなってギスギスしてしまう

時間的に余裕のない毎日では、精神的に余裕がなくなってしまいます。ささいなことでイライラしてしまい、家庭内の雰囲気がギスギスしてしまいがちに。

幸せになるために家庭を持ったのに、余裕のない毎日では何のために働いているのか、わからなくなってしまいます。

共働き正社員夫婦が仕事と子育てを両立する7つの方法

共働き正社員夫婦が日々の生活を乗り切るのに大切なのは、工夫と妥協、そして周囲を頼ることです。

共働き正社員夫婦が日々の生活を乗り切る7つの方法を解説します。取り入れられるものから実践してみてください。

  1. 家事分担を徹底する
  2. 家事育児を頑張りすぎない
  3. 自宅・職場・幼稚園を近場にする
  4. 家族や親戚に助けてもらう
  5. 家事代行サービスなどを利用する
  6. ベビーシッターやファミサポを利用する
  7. テレワークを活用する

家事分担をする

夫婦のどちらかに負担が偏らないように、家事の分担をしましょう。

料理・洗濯・掃除以外にも、トイレットペーパーを補充する、子どもの連絡帳を確認するなど、いわゆる「名もなき家事」も洗い出し、分担することが重要です。

家事の洗い出しをおこなわないまま、ざっくりと家事分担をすると、どうしても気が利く側の負担が大きくなってしまいます。

細かい家事まで可視化して分担したら、自分の持ち分はきちんと遂行しましょう。ただし体調不良や突発的な残業など、タスクを遂行できない状況も出てきます。「このぐらいだったら相手が代わりにしてくれるだろう」という思い込みはトラブルの元です。お互いの認識にズレがないように、イレギュラーなときの対応についても夫婦で決めておきましょう。

家事育児を頑張りすぎない

家事育児を頑張りすぎないことは重要です。共働き正社員では、夫婦ともに優秀であることが多く、家事や育児に対しても「きちんとしなければ」とつい頑張りすぎる傾向にあります。

「生きていればオッケー」ぐらいの気持ちで、とにかく頑張りすぎないよう心がけることが、共働き正社員の毎日を健やかに乗り切る秘訣となるでしょう。

自宅・職場・保育園を近場にする

自宅と職場と保育園、それぞれ3つを近場にすると、移動時間の短縮につながります。

自宅と職場、自宅と保育園のそれぞれの距離は事前に考慮すると思いますが、職場と保育園の距離まで考えていなかった、という人も珍しくありません。

0歳児など低月齢の子では保育園に空きがないことも多く、やむを得ず職場から離れた保育園に預けざるを得ないケースもあります。

自分の努力ではどうしようもできない部分もあるかもしれませんが、もし選べる状況であれば、職場に近い保育園を選ぶことをオススメします。

家族や親戚に助けてもらう

家族や親戚などの身内が近くに住んでいるのであれば、積極的に頼りましょう。

真面目な親御さんほど「自分の手で育てたい」と育児を抱え込む傾向にあります。ネットでは「祖父母をアテにした育児は甘え」など辛辣な意見もあります。

しかし、本当に夫婦2人だけで子育てをするのが正しいのでしょうか。いちばん大切なのは子どもが安心して暮らせる環境です。親がいっぱいいっぱいでイライラしているよりも、周りをフル活用して少しでもゆとりを持つほうが、結果的によいと考えます。

共働き正社員の子育ては、いかに上手に周りを頼るかが重要です。

家事代行サービスなどを利用する

家事代行サービスや食材宅配サービスなど、家事負担を減らすサービスは積極的に取り入れましょう。

いちばんハードルが低いのは食材宅配サービスではないでしょうか。生協やヨシケイオイシックスなど、さまざまなサービスがあるため、自分に合ったものを利用しましょう。家に帰ったら食材がある、買い物の時間を削減できるのは、大きなメリットです。

また、日々の家事で代行サービスを利用するのに抵抗がある人でも、換気扇掃除や季節の水回り掃除だけでも代行サービスを利用すると、休日を有効利用できるためオススメです。

ベビーシッターやファミサポを活用する

休日や早朝・夜間に仕事がある場合などは、ベビーシッターやファミリーサポート(以下ファミサポ)を利用しましょう。

ファミリーサポートとは、子供の送迎や預かりなど、子育ての「援助を受けたい人」と「援助をしたい人」が、地域で相互援助を行う仕組みです。比較的安価でサービスが受けられるため、利用している人も多くいます。利用には会員登録が必要で、住んでいる市町村が窓口となるため、まずは住んでいる市町村に問い合わせてみましょう。

テレワークを活用する

会社にテレワーク制度があれば積極的に活用しましょう。在宅とはいえ仕事なので、日中にがっつり家事をするのはNGですが、通勤時間がなくなるのは大きなメリットです。

今の生活がハードすぎて転職を検討するのであれば、職種的に可能であればテレワーク制度のある会社を選ぶことをオススメします。

自力で情報収集が難しいときは、テレワーク案件に強い転職エージェントを活用するとよいでしょう。

エムアイエスエージェントはITエンジニアなどテレワークが可能な求人情報を多数持っています。テレワークに興味のある方は遠慮なくご相談ください。

共働き正社員を続けるメリット

とてもハードな共働き正社員の毎日ですが、もちろんメリットもあります。

ここでは共働き正社員を続けるメリットを解説します。

  • 経済的に余裕が生まれる
  • 万が一のときのリスクヘッジになる
  • 厚生年金が増える
  • 夫婦が尊重し合える

それぞれ解説します。

経済的に余裕が生まれる

夫婦それぞれが正社員で働けば、その分収入は増えます。

厚生労働省が実施した令和5年賃金構造基本統計調査によると、正社員女性の平均年収は約281万円、非正規社員女性の平均年収は約203万円となります。

年齢が上がるごとに正社員女性の年収は増える傾向にありますが、非正規社員においては年収はほぼ横ばいです。

若い世代ほど、月々の給料は正社員と非正規社員で賃金の開きは少ないかもしれませんが、長期的にみたときに、正社員を続ける経済的メリットは大きくなります。

参考:厚生労働省|令和5年賃金構造基本統計調査(6)雇用形態別にみた賃金

万が一のときのリスクヘッジになる

共働き夫婦では、家事も育児も仕事も、夫婦2人が実施するケースが多いです。万が一どちらかが倒れたときにそれぞれが家事も仕事もできる能力を持っていれば、最大のリスクヘッジになります。

賃金の差、家事スキルの差はあると思いますが、少なくとも収入ゼロのリスクや家事ができなくて生活が回らないリスクは避けられるでしょう。

厚生年金が増える

いわゆる会社員や公務員など、どこかに所属して働いている人は厚生年金に加入しています。

夫婦の両方が厚生年金に加入している場合、それぞれが厚生年金の受給資格を有します。夫婦のどちらかが扶養内で働いている場合よりも、将来もらえるお金が増えるため、老後においてもメリットです。

夫婦が尊重し合える

共働き正社員の隠れたメリットとして、夫婦が尊重し合えることが挙げられます。

どちらかが非正規雇用や専業だと「俺・私が働いているから生活できるんだ」という意識が芽生えてしまうことも珍しくありません。

夫婦それぞれが自立することでお互いを尊重し、ねぎらい合えるので、精神衛生上よい効果が生まれます。

「共働き正社員」という無理ゲーを攻略するために

ひと昔前までは、祖父母と同居、大家族で子育てをしていました。地域のコミュニティも活発で「地域全体で子どもをみる」体制が自然に整っており、夫婦だけで子育てをしなくてはならない今の状況は、人類の歴史上かなり異質な状況だと考えられます。

1日の大半を仕事に費やさなければならない2人が、乳幼児の世話をしながら仕事を続けるのは非常にハードです。

その「無理」をどうにか乗り切るには、完璧を求めないことと、使えるものは何でも使うことが重要です。

そして職場環境が共働き育児に向いていないのであれば、転職も視野に入れたほうがよいかもしれません。リモートワークが普及し、在宅で仕事をする人も増えています。キャリアと子育て、未来の資産形成など、考えることは山積みですが、視野を広く持ち、「共働き正社員」という無理ゲーを乗り切ってほしいと思います。